二人の(非)日常編2 #6



「やっと終わった…!」


達成感を感じながら大きく伸びをすると、肩からボキ、といういい音が鳴った。ずっと同じ姿勢だったせいか、疲労感は半端でない。時間にして30分ほど。ディエゴはとっくに着替え終わって、のんびりくつろいでいる頃だろう。ちゃんと着れたかな?頭脳は大人のはずだから大丈夫か。

トントントン、とリズム良く階段から降りていく。リビングに入ると、積み重ねられた服と…その隣に、見慣れた姿のディエゴ。どう見ても恐竜だった。


「ディエゴ」
「クゥ」


私の方へと駆け寄ってきた。抱き上げると、ずっしりと腕にのしかかる。見ていない間に恐竜になってるいるとは。


「服は着た?」
「クァ」
「そう」


ソファに降ろし、喉を指の背で撫でてあげると、気持ちよさそうに目を閉じた。相変わらずかわいい。撫でる手が止まらない!うりうりうりうり。

ディエゴを堪能しつつ袋を見ると、さっきよりも中に入っている服が少しだけ増えていた。ぐちゃぐちゃだから後で綺麗に畳んでおこう。畳み方を知らないのかな。それとも入れる前に恐竜になったか。…あ、


「ディエゴ、自由に変身できるようになったの?」
「グァルル」
「あ、違うの…。いつでも一緒に出かけられるなーって思ったのに」
「……」
「ディエゴもいろんなとこ行きたいよねェ」
「ク」


ディエゴの隣に座ると、膝の上に乗ってきた。前までは私の膝の上で丸くなって寝れるくらいのサイズだったのに、すっかり大きくなってしまった。中型犬程度か?私を見上げていた瞳がすぐ目の前にある。ちょん、と鼻と鼻をくっつけてみた。所謂鼻キスというやつ。なんとなく。


「いつかスタンドを操れるようになったら、いろんな場所に連れてってあげるからね」
「クァ」
「…あ、ディエゴ大きくなっちゃったからキャリー使えないな……ということは、私は自転車しか使えないから…遠くだったら、交通機関か、誰かの車に乗せてってもらうしかないね」
「グ」
「ジャイロ率高いかも。車運転できるし、事情知ってるし」
「グゥー……」
「私、交通機関ちょっと苦手なんだよね」
「……」


ディエゴはちょっと嫌そうな顔をして、私の隣にごろん、と寝転がった。ジャイロが引き受けてくれるかって問題があるけど、大丈夫な気がする。なんやかんやいい人だし。ジョニィはあの嫌いようじゃあ無理だろうな。それ以前に車椅子だから運転できないか。…ジャイロは私みたいな暇人じゃあないんだった忘れてた。


「私が車の免許持ってればなァ…」
「クァフ」
「だってめんどくさいんだもん」
「…」
「あいたっ」


太ももを蹴られた。…あんまり外に出たくないし、できれば引きこもりしていたい。なんてことを考えていたらまた蹴られた。

ディエゴを抱き上げ、押さえるように腕の中へ閉じ込める。私の好きな匂いがいつもよりずっと近くに。恐竜からこんないい匂いがするなんて、知らなかったし考えもしなかった。そういえば昔、とある人のペットの鳥を嗅いだらなんともいえない良い匂いがした。関係あるかな?


「それに、できるだけディエゴを一人にしたくないし」
「……」
「私がいない間に何か起こるかもしれないもの」


見つめると、顔を逸らされた。ディエゴも寂しいって、思ってくれてたらいいのにな。

…結局は、私が過保護で、心配のしすぎで、めんどくさがりで、寂しがりなだけか。でもディエゴと一緒にいると落ち着くんだよね。一人も、独りも好きだと思ってたけど、やっぱり独りはダメみたい。

なんだか、ディエゴという存在に依存している気がする。きっと失ったら立ち直れない程度には…。ずっと私だけのものでいてほしい。


「……」
「クゥ……」


ぎゅ、と抱きしめると、ため息をつかれた。ディエゴと行きたい場所、決めておかないと。一生の思い出になるはずだから、慎重に。




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