二人の(非)日常編2 #5



「ンッン〜いつもより上手く焼けた気がする」


皿に盛り付けながら一人言を呟く。ディエゴが人間になっちゃったからお肉の量、私と同じくらいに減らした方いいかな?子供を育てたことがないからよく分からない。成長期はいっぱい食べた方いいのかな?後で調べておこう。

丁度盛り付けが終わったあたりで、毛布を纏ったディエゴがこちらに歩いてきた。起こそうと思っていたけれど、匂いで目が覚めたのかな。ひとつ大きな欠伸をすると、私の腰あたりに抱きついてきた。天使か。


「お昼ご飯できたよ」
「くぁ……」


皿をトレーに乗せ、ダイニングテーブルに持っていく。ペタペタ足音を立てながら付いてくるのが最高にかわいい。鳥の雛みたい……恐竜と関係が…?そんな訳ないか。

いつもの指定席に座る。ディエゴの右側だ。向かい側ではなく右側。特に意味はない。ディエゴにフォークとスプーンを渡し、食べ始める。私のはもちろん箸。最近は毎食肉を食べているから太るかと思ったが、そんなことはなかった。むしろ食生活を改善された。ディエゴが来る前は偏食していた。


「あ、そういえば」


さっき買ったものを思い出した。ソファの隣に置いてある袋の中だ。


「服買ってきたから、食べ終わったら着替えようね」
「……ん」


こちらを一瞬ちらりと見やってから口に肉を頬張る、その横顔を見つめる。睫毛長いなァ。西洋の子供ってこんなに可愛いのか。目がぱっちりだし、顔のバランスが良い。ほんのちょっぴりしか聞いていないけれど、声もかわいいし。ご飯がすすむ。そういえば、知り合いに外国人が沢山いるが、子供には会ったことがない。

私より一足早く食べ終わったディエゴは、食器をそのままに買い物袋の方へ歩いて行った。その隣に座り、取り出した衣類を床に並べている。毛布片手じゃあ食器を運べないからね。

早く着替えさせてあげたいので、残りのご飯は手早く胃に詰め込んだ。ちょっと無理矢理感があるが気にしない。ディエゴの食器もまとめてトレイに乗せ、キッチンの流し台へ。後で洗おう。

ディエゴの方へ行くと、どれを着ようか迷っている様子。いっぱいあると迷うよね。


「気に入らないのあったら返品するから、こっちに寄せといてね」
「んー……」


言い終わってすぐ、星柄の青いパーカーを私の方に寄せてきた。ジョニィがよく着てる柄に似てるからかな?かわいいと思うのだけれど。

綺麗に畳み直してから袋にしまう。大人の方のディエゴが気に入ってる服によく似たデザインのものも買ってきたが、お気に召したようだ。毛布の隙間から伸びる小さな手にギュッと握りしめている。

あの自己主張が激しい帽子は当然ながら売っていなかった。オーダーメイドだろう。尖ったズボンや手袋、ブーツは騎手専門のところにしか売っていないのかもしれない。乗馬サークルの誰かに頼めば買えるかなァ。なんだかディエゴにコスプレさせてる気分になってきたぞ。

シンプルな服を多めに買ってきたせいか、返品する服は想像よりかなり少なかった。

あぁ、そうだ。サイズが合ってるか確かめなくては。多少大きめの服を買ってきたから着れないってことはないだろうけど。


「ディエゴ、タンス片付けてくるから着替えててね」
「……ん」
「着方はなんとなくでいけそう?」
「うん」


いい子、と頭を撫でてからリビングを出る。2階の倉庫に大きめのタンスがあるので、私の服を整理すればディエゴのも入るだろう。元からそこまで服を持っているわけでもない。

倉庫の埃っぽい空気を吸ってすぐ、換気のために窓を開けた。整理を始めよう。






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