二人の(非)日常編2 #4



「……ディエゴ?」


手を下ろして尋ねると、その子は嬉しそうな顔で、コクリと頷いた。まさかと思ったが本当だとは…。スタンドが関係あるのかな?恐竜化が能力だったらしいし、無意識のうちに発動して…?しかし、前世では使いこなせてたはず。もしかして、暴走しているとか?だからずっと恐竜だったのかもしれない。


「……くしゅん!」


原因について考えていると、ディエゴは小さなくしゃみをした。体が冷えたのかもしれない。服着てないっぽいしなァ。ベッドに敷いてある毛布を取ってディエゴの体に巻きつけた。気休め程度だけど…。


「服、どうしようか」


あいにくうちには子供服など無い。元々私しか住んでいないのだから当然だ。家族を呼んだりもしない。
買いに行くしかないか。ディエゴも一緒に連れて行きたいところだが…服着てない子は流石にアレだよなァ。しょうがない、一人で行くか。身長は……120cmくらいかな?目測だから不正確だけど。


「これから服買ってくるから、留守番お願いしてもいい?」
「ん……」
「ずっとここにいるのもアレだから、リビング行こうか」


ディエゴを毛布ごと抱き上げ、リビングへ向かう。私の首に回された手は、恐竜の鱗に覆われたままだった。

リビングのソファの上に降ろすと、大きな丸い瞳で私を見上げた。毛布の隙間から白い足がはみ出している。子供の肌は綺麗だ。羨ましい。


「できるだけ早めに帰ってくるからね」


ディエゴの、クセひとつないさらさらした髪を梳きながら言う。撫でられるのが嬉しいのか、ふわりと優しく微笑んだ。……かわいいッ!


「いってきます」
「い……て、らしゃ……」


名残惜しく思いつつ手を離すと、たどたどしい別れの言葉と共に、小さく振られた手。これは早く帰らねばッ!

大急ぎで財布とバッグを掴み、家から駆け出す。ディエゴが突然素早く動きだした私に驚いたのが一瞬見えた。あっ鍵かけ忘れた。走ってドアまで戻る。…自転車も忘れるところだった。スピードが段違いだよ。アホな自分を呪いつつ自転車に跨る。



ゼェハァと息切れしながらやっと目的地に辿り着いた。様々なお店が立ち並んでいるため、出かけるときはかなりの頻度でここに来る。子供服を売っている店に行こう。

店内に入ると、目の前に広がる子供服の山。どれを買ったらいいだろう?ディエゴの好みを知らないので取り敢えず色々買ってみよう。気に食わなかったものは誰かに譲るとかすればいい。

そういえば、人間の方…じゃあ恐竜の方も人間になってしまったから分からないか。大人の方のディエゴは、自分の騎手服をかなり気に入ってるみたいだった。好みが一緒かもしれないから、あれと似たようなのも買っておくか。確か格子柄でハイネック……だったような気がする。下は太ももあたりがなんか尖ってたけど、あんな子供服売ってないだろうから普通の白いズボンにしておく。ブーツはいいや。


とりあえず、必要そうなものは全部買っておいた。普段着に始まり、寝間着、靴やサンダル、下着、靴下などなど。結構な額になったが私の財布は底を知らないので問題なし。でも自転車のカゴに全部入るのか。


心配は不要だったようで、多少きつそうだけれど全部入った。服が小さいからかな。ついでに何か買って帰ろうかと思ったけれど、つい昨日買い物に行ったばかりだということを思い出し、やめた。


「……あっヤベ」


早めに帰ろうと思ってたのに、時計を見ると2時間近く経っていた!なんてこった。さっさと家に帰ろう!ディエゴもお腹を空かせているに違いない。



またも息切れしながら、やっと家まで辿り着いた。自転車を止め、荷物をカゴから引っ張り出して玄関まで駆ける。


「ただいまァ」


玄関を開けると、マットの上でディエゴがすやすやと眠っていた。帰りを待っててくれたのかな。なんて可愛さ。荷物を置き、ディエゴを起こさないように抱き上げる。寝顔可愛…なんてこった。抱き上げ方が悪かったのか、毛布がずり落ちそうになっている。落ちないように小指で支えながら、ディエゴをソファへと運ぶ。

子供といえど、ほら。見ちゃいけないと思う。顔を逸らしながら毛布をかけ直す。着替えは自分でしてもらおう。教えればできるだろうから。

買ってきた衣類をリビングに運ぶ。後でサイズ確認しなければ。ラベルは着るものだけ切ろう。別に返品できなくても問題ないが。

急いで帰ってきたせいで汗をかいたので、顔を洗おう。すぐ洗面所に向かう。栓をひねると、そこから水が流れ出した。バシャバシャと顔にかける。水が熱を吸い取っていく。タオルで拭くと、さっきよりずっとさっぱりした気分になった。


さて、昼食を作ろう。今日も変わらず簡単に作れるやつだ。






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