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夜が近づいてきたので、暗くなり始める前に帰ることにした。ずっと動き回っていたせいでへとへとだ。屋敷の扉を開くと、見覚えのある金髪が目に入った。椅子に座って、(すごく変な姿勢!)何かの本を読んでいる。…あ、もしかして。


「ただいま。あれ、ディオ。もう帰っていたのかい?」
「あぁ、街の図書館で探すつもりだった本が見つかってね。……後ろの彼は?」


やっぱりディオだった。彼、と言われて誰だろうと周りを見たが、私たちの他に誰もいなかった。ディオの方を見ると、私をガン見していたので、おそらく私のことを言っているのだろう。まさか男に間違われる日が来るとは…。まあ子供だと男か女か分からない子はよくいるからね。…あっ、服装のせいか。今ジョナサンの服を着ているんだった。
ディオはテーブルに本を置きこちらに早足で歩み寄ってきた。


「ん?彼…?あぁ、この子が一緒に暮らすことになった亜梨子。…女の子だよ」
「黒松亜梨子です。…これからよろしくお願いします」
「…あぁ、そうか。僕としたことが…失礼した。君のことはお義父さんから聞いているよ。僕はディオ・ブランドー。よろしく。」


愛想の良い笑顔で私に手を差し出された。一瞬なんだろうと思ったがすぐに握手だと気付いたので、慌てて手を出し、ぎゅ、と彼の大きな手を握る。触れたところから、じわじわと体温を奪われていったような気がした。


「見慣れない顔立ちだが、東洋人か?」
「え、あ…はい」


パッと手を離すと、じぃっと無遠慮に見つめてくるので思わずジョナサンの後ろに隠れてしまった。不可抗力みたいな…そういうあれ。


「…どうして隠れるんだ」
「ディオが怖い顔をするからだよ」
「なっ…そんな顔していたか?」
「うん」


どうやらディオを怖がっていると思われたらしい。本当は恥ずかしいやらなんやらも含んでいたけど…まあいいか。


「あっ、そろそろディナーの時間だ、行こう」



晩餐室に入ると、私はジョナサンの隣の椅子に座った。そして、食事が始まってから気がついた。…私はそういう場での食事のマナーを知らない!海外なんて一度も行ったことがないし。どうすべきか…。取り敢えず見よう見まねでやってみよう。ぎこちないかもしれないけれど。


「…亜梨子、食べ方、教えようか?」


ジョナサンは、私が彼の手元を見て、真似しながら食べていることに気がついてしまったようだ。なかなかの観察眼。…ちょっと恥ずかしいけれど、申し出はありがたい。


「お願いします…。」
「……」


何故かディオに小馬鹿にしているような目を向けられた。マナーも知らないのかよ、と。しょうがないじゃあないか!ここに来るまでは一般庶民だったんだから!目で訴えると鼻で笑われた。くやしい。
ジョナサンに説明をもらったので、多少はぎこちなさがなくなったと思いたい…。

前までいた世界で、イギリスはメシマズとよく聞いていたが、そこまで酷いものではなかった。卿曰くシェフはフランス仕込みの腕らしい。…だからか。





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