3 ベッドに横になって休憩していたら、ジョナサンが訪ねてきて「今から外に散歩しに行くんだけど、一緒にどう?」と誘ってきた。特に断る理由もないので二つ返事で了承した。 屋敷からちょっと離れたところにある川まで遊びに来た。二人並んで、素足を水に浸す。ひんやりしていて心地いい。 「ねぇ、亜梨子はカエルは好きかい?」 「うん。小さいのなら触れるよ」 「よかった。見て!今捕まえたんだ」 ジョナサンの手の中には2cmくらいの小さなカエルが!なんだか、見た目は大人なんだけど、子供の心が残っているというか…。お茶目! 「わぁ!かわいい」 顔を近づけてつついてみると、とぴょんと跳ねて川に逃げてしまった。 「あっ…行っちゃった…」 「もう一回捕まえてこようか?」 「んー…、いいや。手が届かないところに行っちゃった」 足をバタつかせて水飛沫を飛ばす。紅い光を反射させていて実に綺麗だ。…そういえば、ここは川だけどもしかしたら近くの木にあれが…あったり…。 水から足を上げ小走りで一人木のところに向かう。川に背を向けた位置には、予想通りJOJO、ERINAと彫ってあった。ハートで囲まれている…お熱いねェ!でもこんなところに彫って目立ちそうだなぁ。 「どうしたんだい亜梨子?…あっ」 突然走り出した私を追いかけてきたようで、文字が見つかったことに気づいてか、頬を赤く染めている。二人の名前を両手で隠してしまった。…この人は天使なんじゃあなかろうか。 「こ、これは…その…」 「ふふ、エリナって人はジョジョの恋人なの?あなたもなかなか可愛いことするね」 「か、可愛いって…あぁ、恥ずかしい!このことは忘れてくれ!」 あまりに必死だから、ついくすくすと笑ってしまった。するとジョナサンは眉尻を下げて困ったような顔をする。 「ジョジョにこんなに愛されてエリナさんは幸せね」 「うぅ…」 「一度でいいから会ってみたいな。きっと優しい人なんでしょう」 「…彼女は、…2年前にインドへ引っ越してしまったんだ。…喧嘩じゃあないんだけど、気まずくなったままで…」 「あっ……悪いこと聞いちゃったね…大丈夫、そんなに好きなんだもの。また会えるよ」 「…そう、だといいな」 私が慰めるように言葉をかけると、ジョナサンは寂しさを隠すように笑顔を見せる。なんという一途。 彼がとても背の高い木に軽々と登っていくのを見て『自分も負けていられない!』と付いていったが、いかんせん体が小さいせいで上手く登れない。これは結構不便だな。 「亜梨子、こっちまで登れるかい?」 「うーん…あとちょっとなんだけど…」 手を掛けられそうなところにギリギリ届かない。悪あがきに枝を引っ掻いていると、見かねたジョナサンがこっちに手を伸ばしてきた。 「ほら、掴まって!」 「ありがとう」 軽々と体を持ち上げられて漸く辿り着くことができた。流石、後の重機関車なだけはある。 見渡す限りに広がる草原に、夕日が映って赤く光っている。炎の原みたいだ。 「こんなに綺麗な景色初めて見た…!」 「そうなのかい?それはよかった」 きっと一生忘れないだろう。この、二人一緒に見た景色は、たった今記憶に焼き付いた。 ふわふわ浮いて、まるで夢を見ているようだけれど、さっき確かに触れた。今、私の隣にジョナサンがいることは、夢でも幻でもない、現実なんだ。…ここが私の新しい生きる場所なんだな。 「…どうかしたかい?」 「へ?…あ、いや、なんも」 話しかけられてやっと、ジョナサンが私を見ていることに気がついた。ちょっと恥ずかしい。 「…これから、よろしくね」 「?…うん、よろしく!」 |