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ベッドに横になって休憩していたら、ジョナサンが訪ねてきて「今から外に散歩しに行くんだけど、一緒にどう?」と誘ってきた。特に断る理由もないので二つ返事で了承した。


屋敷からちょっと離れたところにある川まで遊びに来た。二人並んで、素足を水に浸す。ひんやりしていて心地いい。


「ねぇ、亜梨子はカエルは好きかい?」
「うん。小さいのなら触れるよ」
「よかった。見て!今捕まえたんだ」


ジョナサンの手の中には2cmくらいの小さなカエルが!なんだか、見た目は大人なんだけど、子供の心が残っているというか…。お茶目!


「わぁ!かわいい」


顔を近づけてつついてみると、とぴょんと跳ねて川に逃げてしまった。


「あっ…行っちゃった…」
「もう一回捕まえてこようか?」
「んー…、いいや。手が届かないところに行っちゃった」


足をバタつかせて水飛沫を飛ばす。紅い光を反射させていて実に綺麗だ。…そういえば、ここは川だけどもしかしたら近くの木にあれが…あったり…。
水から足を上げ小走りで一人木のところに向かう。川に背を向けた位置には、予想通りJOJO、ERINAと彫ってあった。ハートで囲まれている…お熱いねェ!でもこんなところに彫って目立ちそうだなぁ。


「どうしたんだい亜梨子?…あっ」


突然走り出した私を追いかけてきたようで、文字が見つかったことに気づいてか、頬を赤く染めている。二人の名前を両手で隠してしまった。…この人は天使なんじゃあなかろうか。


「こ、これは…その…」
「ふふ、エリナって人はジョジョの恋人なの?あなたもなかなか可愛いことするね」
「か、可愛いって…あぁ、恥ずかしい!このことは忘れてくれ!」


あまりに必死だから、ついくすくすと笑ってしまった。するとジョナサンは眉尻を下げて困ったような顔をする。


「ジョジョにこんなに愛されてエリナさんは幸せね」
「うぅ…」
「一度でいいから会ってみたいな。きっと優しい人なんでしょう」
「…彼女は、…2年前にインドへ引っ越してしまったんだ。…喧嘩じゃあないんだけど、気まずくなったままで…」
「あっ……悪いこと聞いちゃったね…大丈夫、そんなに好きなんだもの。また会えるよ」
「…そう、だといいな」


私が慰めるように言葉をかけると、ジョナサンは寂しさを隠すように笑顔を見せる。なんという一途。

彼がとても背の高い木に軽々と登っていくのを見て『自分も負けていられない!』と付いていったが、いかんせん体が小さいせいで上手く登れない。これは結構不便だな。


「亜梨子、こっちまで登れるかい?」
「うーん…あとちょっとなんだけど…」


手を掛けられそうなところにギリギリ届かない。悪あがきに枝を引っ掻いていると、見かねたジョナサンがこっちに手を伸ばしてきた。


「ほら、掴まって!」
「ありがとう」


軽々と体を持ち上げられて漸く辿り着くことができた。流石、後の重機関車なだけはある。
見渡す限りに広がる草原に、夕日が映って赤く光っている。炎の原みたいだ。


「こんなに綺麗な景色初めて見た…!」
「そうなのかい?それはよかった」


きっと一生忘れないだろう。この、二人一緒に見た景色は、たった今記憶に焼き付いた。

ふわふわ浮いて、まるで夢を見ているようだけれど、さっき確かに触れた。今、私の隣にジョナサンがいることは、夢でも幻でもない、現実なんだ。…ここが私の新しい生きる場所なんだな。


「…どうかしたかい?」
「へ?…あ、いや、なんも」


話しかけられてやっと、ジョナサンが私を見ていることに気がついた。ちょっと恥ずかしい。


「…これから、よろしくね」
「?…うん、よろしく!」




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