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食事の後、「さっき汗かいたしお風呂入りたいなァ〜」と思ったのでジョナサンに尋ねてみたところ、「バスタブにお湯をためるの、かなり時間がかかるよ。お湯を手動で運ばなきゃならないし…。シャワーならすぐ浴びれるよ」とのことだったので、シャワーを浴びることにした。

まさかとは思っていたが、本当にボイラーが無いとは…。聞いたらお風呂に入るのは月に何度かだけで、ほとんどシャワーで済ますらしい。マジかよ。
日本とは気候が違うから、そのせいだろうか…。緯度的には北海道よりも北だし。…憶測にすぎないけれど。


壁に付いている蝋燭に火を灯し、ドアを閉め、鍵をかける。磨りガラスなので外から中は見えない。キュッと、私からしたら高いところにあるシャワーの栓をひねると、勢いよく水が吹き出した。パシャパシャと水が肌に当たって弾ける。思っていたよりひんやり。

この時代は全て石鹸で洗うようで、もちろんボトルのシャンプーなど存在しない。石鹸を泡立てて髪を洗う。わしゃわしゃ。わしゃわしゃ。冷水だから体冷えそうだな、と思いつつも続ける。日本人だからかお風呂からは離れられない。週1回なんて言われたら…。ああ恐ろしい。シャワーだけでもあってよかった。



頭も体も洗い終わると、さっぱり爽快な気分!冷水でさらにドライヤーがないから、貧弱な人だと風邪ひきそうだなァ。なんて思いつつタオルを取る。髪の水気を取って、あまり濡らさないように気をつけながら服を着る。相変わらずジョナサンのもの。スカートより動きやすいし、お下がりだけで良いような気もするのだけど、ジョナサンは買いに行く気満々のようだった。

「西洋ってなんで室内でも靴を履いているんだろう。風呂上りとか蒸れそうなのに!」と小さく呟きながら、首にタオルを巻いて廊下に出たら、ディオに見つかって「はしたないぞ!」と言われて服装を直された。ついでにタオルで髪を拭かれた。…着方間違ってたかな。

『ちょっと手つきが乱暴だけど、優しいところもあるんだな〜』と、褒めているのか貶しているのか微妙なことを思いつつ、じっとして終わるまで待つ。ディオは何やらブツブツと小言を言っているが、全く耳に入ってこない。手が止まり、漸く終わったか、と思って見上げると、琥珀色の瞳が私を見つめている。…デジャヴだ。

私は何も言わず、逃げるようにその場を去った。



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