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マイクラ二次オリ

「パラレルワールドの存在って信じてる?」
ぼんやりと農作をしながら友人に尋ねると、家を建築するのの息抜きだといって家畜に餌をやっていた手を止めて振り返った。
「なんだ? 突然」
「んん、まあ」
煮え切らない返事を返しながら、返答を促す。友人は少し言葉を濁しながら「どちらかと言えば信じないな」と答えた。
「本当にどうした? 農作に飽きたのなら代わろうか?」
「んん、んー…… 農作に疲れた人間の戯言だと思って聞いてほしいんだけど」
「どうぞ」
家畜を囲っている柵の横に余った小麦を放って、インベントリから取り出したクッキーをかじるのを横目に見て、私は口を開いた。

(たとえば、いま私たちが生きるこの世界のほかに、ひとつふたつじゃないたくさんの世界が存在するとして。私たちはその世界間を好きに行き来できるとして。
 たとえばその世界間を行き来しているのは肉体ごとなのか精神のみなのか。行き来の方法がこの世界での死だとしたら。たとえば動物や私たちは死ぬとなんらかのアイテムだけ残して体は消えるが、それは肉体と精神がこの世界のものを残して別の世界に転移しているんじゃないか。)

「くだらない話でしょう」
誰にも話さず、ずうっと隠していたことを誰かに話すのは楽ではなくて、うまく要領の得ない話をうんうんと相槌を打ちながら聞いていた友人は、しばらく考えるように黙っていた。
それを見て農作に戻る。骨粉を何度か振り掛けて幸運エンチャントの付与されたクワで芋を回収し、また芋を植えては骨粉を振り掛ける。それを繰り返していると友人が「なあ」と呟くように言った。
「以前に死んだペットのことを言っているのか?」
「んん、まあ」
友人はまた黙ってしまった。

(たとえば、この世界での死こそが別の世界への唯一の移動方法なのだとしたら。以前に死なせてしまったペットもまた、別の世界へ移動しているとしたら。僅かでもその可能性が見えるなら。)

「きみを置いては死なないよ」
「んっ?」
「きみが死ぬときは私も死ぬよ」
友人は目をまあるくして私を凝視した。その視線が少し気まずくて、誤魔化すように笑った。
牛が柵の間から小麦を舐めてるよ、と言うと友人が自分の足元に視線を落とし、柵の隙間からべろべろと舌が出たり引っ込んだりしているのを見てギョッと叫び、牛の頭をベチンと叩いて小麦を奪った。分かるはずもないのに牛に向かって説教を垂れる友人と、友人が持つ小麦に群がってくるたくさんの牛がおかしくてケラケラ笑った。


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