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爆豪勝己

幼馴染がふたりいる。
ひとりは何もできない無個性。ひとりは強力な個性を有したせいで調子乗っちゃってるやつ。
私はどっちにも属さない没個性。

「なあお前、カツキのなに?なんであんな、カツキに馴れ馴れしいわけ?」
かは、と仕事をしない声帯の隙間から空気が漏れる。
10センチばかしでかい男に囲まれるのはSAN値が大幅に減るからやめてほしい。指が伸びるやつと、あとの個性はなんだっけ。二人で私を上から見下ろすせいでこっちは萎縮してしまう。
なにってなに。幼馴染じゃん、ただの。無個性と強個性に挟まれるただの没個性じゃん。無いほうがマシだったんじゃねーのってくらいのゴミ個性。を、持った、出久に並ぶ気の弱さを誇る、幼馴染B。AじゃなくてBのほう。
お前、だって、勝己のなんだよ。取り巻きAとBのくせに調子乗ってる。虎の威を借る狐かよ。
「な、にって」
気が弱いからなにも言い返せない。言い返せないから腹の中に溜まったものがぐつぐつ煮えてそれを勝己にぶちまけることしかできない。
「おい」
声変わりしたばっかの低い声。うつむけた顔を上げるとスクバをリュックみたいに背負った勝己がいた。年々目つきがきつくなってく三白眼が私からすっと逸れて私を囲んでた取り巻きAとBを見る。
「そんなやつに構ってんなよ」
くるりと私たちに背を向ける。取り巻きもそれに返事をして私から離れていく。私の手を引いて先を進んで俺が俺がって言ってた勝己はもういない。
きゅうと胸が苦しくなって目頭が熱くなって、でもここで泣いたらうぜーから泣かないようにこらえた。自分のスクバをひっつかんで逃げるように学校を飛び出した。
途中、勝己と取り巻きの横を通り過ぎたけどなにもなかったようにされて、それが悲しさを助長させた。

部屋にひきこもってひんひん泣いてたらカララと部屋の窓が開く音がした。どうせ勝己だろと思って無視していたら熱い手が背中に触れた。
「何泣いてんだよ」
「べつに…私みたいなのが幼馴染でごめんね」
「ハァ?」
うっぜーな、っていう顔を見たくなくって突っ伏したままでいたらまた悲しくなって涙が出てきた。ぐずぐず鼻をすすったら勝己がため息を吐いた。その行為が私にストレスを与えることに気付いてないんだろうな。
「あいつに何言われたか知らねーけど、あんなやつに病んでんじゃねーよ」
勝己がぐしゃぐしゃ髪を掻き乱す。
学校で何かあったら部屋に来て、不器用に私を慰める。
この時間が嫌いじゃなかったりする。


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