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爆豪勝己

※彼らになんら恨みはないけれど人が既に死んでいる描写があるのでそれだけ申し訳ない気持ちです




ひとはものを忘れるとき、まず声から忘れるんだそうだ。次に忘れるものは知らない。顔だったか名前だったか仕草だったか。それ以上を調べるのは、なんだか悲しくなってやめてしまった。
夕方のニュースで、ヒーローのだれそれがヴィランとの戦闘中に死んだと報道されていた。かつて多忙な高校生活を過ごしたクラスメイトの一人だった。最近、雄英を卒業したヒーローたちがどんどん死んでいく。それが一人の、同じヴィランによる死であることを悲しく思う。それから私が、未だにそいつの標的にされないことも。
なんで私が生きてるんだろ、って思う。上鳴くんや切島くんや、芦戸さんももういない。今日死んだのは瀬呂くんだった。
「瀬呂くんの声、どんなだったっけ」
「さぁな」
いつからだったか。気付いたら爆豪に軟禁されている。ふたり…雄英の元生徒が死んだのがさんにんめってときだったか。息を切らした爆豪が私の手首のあたりを掴んで一緒に来いって。ヒーロー事務所で事務をしていたけれどそれも辞めさせられて、爆豪のマンションで暮らしている。外に出るときは必ず爆豪と一緒。鬱陶しいと思うときもあったけど正直助かっていた。クラスメイトたちが次々死んでいくのが怖かったから。そんなときに一緒にいてくれる人がいるというのは気が和らぐというものだ。
「留守電に残ってなかったっけ」
「誰も電話なんかしてこねぇだろ」
「そっか」
そっか。そっかぁ。
次に死ぬのは誰だろう。それを思うと、心臓が細糸でキュッと締められたように悲しくなって、なみだが出てきた。
次に死ぬのが私ならいいのに。爆豪や、轟くんや、デクくんたちがずっと生きていてくれればいいのに。


人はものを忘れるとき、最初に声を、次に顔を、最後に思い出を忘れるのだそうですよ
2018/03/27 同一のヴィランによるものではない、というのを同じヴィランがやったってのに変えました今後のために それだけです


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