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爆豪くん

中三の春、同じ歳の男の子がヘドロみたいなヴィランに捕まった。ヒーローは個性の相性が悪いからとかでみんな応援を待ってばかりで、野次馬私はヴィランに太刀打ちできる個性だったのに足がすくんで動けなかった。
あとあと地味な男の子が助けに入って、オールマイトが来て、ヴィランは回収された。ヴィランに抵抗しつづけたタフネスがすっごいなって、思った。

風のうわさで、ヘドロの子が雄英に入るって聞いた。ヘドロの子と、あわよくば親しくなりたくて私も雄英を受けた。試験会場はヘドロの子と同じ会場だった。
遠くでずっとドンドンやってるから、ヴィランに見立てたロボがみんなそっち行っちゃって。だからそれを追いかけてロボをぶっ飛ばしてなんとかポイントを集めてた。
雄英にはちゃんと受かった。

オールマイトに匹敵する身体能力と超パワーをもってしても、ヘドロの子もとい爆豪くんは私を見なかった。彼の眼中にはオールマイトと地味でおどおどしい緑谷くんしかいなくって、ああ羨ましいなあって思って。
でもどうしたら爆豪くんに意識してもらえるのかわからなかったからそのままにしてた。

これは、爆豪くんと同じクラスにならなきゃわからなかったことなんだけど。
ぜったい頭良さそうじゃないのにめっちゃ勉強できるところとか、ヘドロのときから思ってたけどヒーロー顔負けのすっごく強い個性とか、ヴィランのほうが性にあってんじゃないのって揶揄される性格とか顔とか、それ全部ひっくるめて私は爆豪くんを好きになってしまった。
あとは演習授業で一度だけ組んだときに知った、制服を着てたときにはわからなかったけどすっごく広い背中。私が飛びついたって揺らぐことなんかないんだろうな、って思う。
実際に行動に起こしたら爆破じゃ済まなくなるのは知ってるけど。

知ってた、けど。
私の数歩前で階段を降りる爆豪くんがいた。制服を着てるときの爆豪くんは、やっぱり背中が広いようには見えない。
以前にも思った、私が飛びついたって揺らぐことはないんだろうな、って考えが頭に浮かんだ。何度振り払おうとしてもその考えは消えてくれない。
消えるどころか次第に大きくなってしまって、実行したい、なんてバカなことを思ってしまう。
一階と二階の踊り場に爆豪くんが立った。私も階段を降りる。爆豪くんが踊り場から一階への段差に足を下ろす。私が踊り場に来たとき、爆豪くんは階段の中腹にいた。
怪我しないでくれよ、と願いながら。床を蹴って爆豪くんの背中に飛びついた。う、と短く爆豪くんが呻いて、手すりを掴む。
思ったより爆豪くんの背中は広かった。


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