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爆豪くん

「ねえ、彼氏できたって、ほんと?」
「え、うん」
どこから聞きつけたのか、クラスメイトが寄ってきて開口一番に言った。彼の幼馴染、らしいから彼女にはなにも言わなかったのだ。
だって邪魔されちゃあいやだから。
「ねえー、だれ?あたしの知ってる人?同じクラス?」
「えー、どうしよっかな」
どうせ、知ってるんじゃないの。本人から聞いてるんじゃないの。いっつも二人、べたべたしてんだから。
あの、爆豪くんが、嫌がる素振りを見せずにそれを許しているんだから。
「ね、お願い、誰にも言わないから」
言うでしょ、あなた、口軽いんだから。
どうしようかな、とはぐらかす。ちらりと見た時計の針は、あと十数秒ほどでHRが始まるような時間だ。はやく、はやく、チャイムよ鳴って。

かつき、と親しげに呼ぶあの子が嫌いだった。私と違って社交的な性格も、フレンドリーな口調も、すべてが私と対象的で。劣等感にも似たものを抱いていた。
「ばくごう、くん」
ぼん、とひとつ、爆破音。その音の発生源は、面倒事はごめんだと言いたそうに私を睨んでいた。
ふ、とクラスメイトが表情を失くす。珍しいな、と思った。彼女はいつも笑顔を絶やさないから。
「かつき…」
(あ、いやだ)
いやだ、いやだ。そんな目で爆豪くんを見ないで。そんな、まるで自分の恋人かなにかを見るような顔、しないで。
爆豪くんの彼女、私なんだから。ただの幼馴染のあなたが、そんな顔、しないで。



昔っから一緒だった。なにをするにも「かつきくんと一緒に」が求められた。
個性が発現してからはかつきはどんどん先に行ってしまって、あたしは追いかけるのにいっぱいいっぱいだった。
「かつきの幼馴染」でいればかつきはあたしを突き放さない。だからあたしは他の子が勘違いするような行動をとった。
下の名前で呼んで、猫撫で声を出して、スキンシップも多くした。
それなのに、なんで。なんであたしの立ち位置にあんたがいるの。
「ねえ、彼氏できたってほんと?」
なんであんたが。


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