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知能が低い



「どうも、みなさんお久しぶりです私です。前回の動画ですが前々回と同様見事に一万再生を記録しました。ありがとう。某氏の友人三人が夜な夜な何百回も再生してくれたおかげですね。八百長はだめだぞ。
 えー本日は私のクラスメイトがアルバイトをしているということを聞きつけたので彼のアルバイト先に突撃する所存です。
 普段は無表情を貫き通す某クラスメイトは果たして笑顔で接客ができるのでしょうか。ムカつく客を氷漬けになどしていないのでしょうか。心配事が増えるばかりです。
 最後になりましたが本日動画を撮影してくれているのはかみなりきゅんです。はじめてタッグを組みますがよろしくお願いしますね。それでは参りたいと思います」
「なあ俺のコメントは?」
「ないです」




自動ドアが左右に開くと同時に軽快な開店音とBGMが私たちを招いた。お目当ての彼は〜、と店内を見回すまでもなく、某クラスメイトもとい轟くんはレジにいた。
いらっしゃいませー、という棒読みが私たちを出迎える。商品を手にとることもせず手ぶらのまま轟くんの前に立つと、やっと彼は私たちに気付いたようだった。
私を見、私のうしろのかみなりきゅんを不思議そうに見る。
「スマイルひとつ!」
満面の笑みを浮かべて元気よくそう言うと、次の瞬間に洗い場(?)からアラームが鳴った。

その音を聞きつけ、轟くんはちらりと背後を見やり、私を見て、軽く息を吐いた。
「あ、スイマセン」
躊躇うこともせず、レジ休止中の札をトンッ…と私の前に置く。

さっと背を向ける轟くんと、目の前のレジ休止中の札を見比べていると、隣のレジの店員がドン引きしながら「お客様ぁ、こちらどうぞぉ」と笑いをこらえているような声で言った。
私は泣き笑いしながらその場に崩れ落ちた。


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