志摩センセ
「あ、志摩センセ。」
ピンクが入った茶髪が反応した。書面から顔を上げてあたしを見る。たれ目が大きくひらかれる。
「みょうじさんや。」
「先生、何してるんですか? それ、答案?」
「そ、丸付けしとるんよ。みょうじさんのはまだやっとらんね。」
見んでな、と柔らかく笑う。見ませんよと言いながら教卓の前の列の、真ん中の席に座った。
この席なら教卓の答案用紙は見えないし、けれど俯いている志摩センセの顔はよく見える。
目を引くほどのイケメン、というわけじゃあないけれど。棘のない訛りとピンクブラウンの髪が好きだった。友人は遊んでそうだなんて言うけれど、まあ確かに遊んでそうなんだけれど、私はおかたい黒髪よりもピンクブラウンの方が好きだ。
ちらちらと二枚並べられたうち左のプリントを見ながら、シャッシャッとペンを回す。時々、キュッと短く音が鳴るのは、多分ペケ。
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