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廉造

 
寒い、寒いと手をこすり合わせる廉造は、いつものごとく足の短い私に歩幅を合わせてくれる。私はマフラーに鼻まで埋めても厚手のタイツを穿いても両手をコートのポケットに入れてもまだ寒い。寒い、寒いと二人してぼやく。明日はカイロ持っていこう、なんなら湯たんぽ持っていこう。手をこすりあわせて、その手にはあーって息を吐きかける廉造の鼻は寒さからか少し赤い。ピンクブラウンから覗く耳も、寒そうに露出した手指の先も。マフラーなんかつけてないから、晒された首が本当に寒そうで、寒そうで。そんなに寒いんなら兄貴からマフラーなり手袋なり借りれば、って思うんだけど、多分それを言ったら廉造は、「なまえがマフラー編んでくれればええやん」なんて軽口を叩くだろう。北風が拭いて私の髪をさらった。廉造がぶるっと体を震わせてもう一度、寒いと言う。それに相槌を打つつもりで寒いと、私も。廉造が両手で口元と鼻を覆い、息を吐きながらちらりと私を見る。視線に気付いて何、と問うと、そんなに寒いんなら手でも繋ごか、と。右手をコートのポケットから取り出して差し出された手を取った。手袋をしていないから、すごく冷たい。眉をしかめて冷たいと文句を言うと、廉造は困ったように眉尻を下げて笑いながら、私の手を自分のコートのポケットに招き入れた。


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