夏目
「ナツメ。」
呼びかけ、応答の無いことに不安を覚えた。
布団を剥ぎ、胸のあたりに手を置く。薄い布越しに、ナツメの体温が、静かに呼吸する胸の動きが感じられた。
───生きている
そのことに、ひどく安堵した。
「どうした?」
いつの間に目を覚ましたのか、はじめから起きていたのか、はたまた私が触れた時にでも起こしてしまったのだろうか。ナツメは色素の薄い瞳で私を見つめる。
「なんでも、ないよ。ナツメ。」
「そうかい。」
ふっと笑い、ナツメは私の頬にそっと触れた。あたたかい手だ。
「怖い夢でも見たのかい。何も泣く必要は無いよ。」
ナツメの優しい声音に、目を瞑った。
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