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ロー

 
「お前か、刀を溶かす能力者ってのは。」
「そう、だね。」

どろり、私の手のひらから泥か何かのように落ちていったのは刀、だったもの。溶けてしまってもう原型は無い。
私と対峙した刀の持ち主である海兵は既に息絶えている。別に殺したくて殺したわけじゃない、斬りかかってきたから触れただけだ。そうしたら、私が触れた場所が服と一緒に溶けた。
どろどろの刀と体の真ん中がどろりと溶けて穴が空いた海兵の死体。の、前に立つ私。私の背後でピリピリ肌に痛い殺気を出すのは、知らない男。
振り返る。
今夜は満月で、男の顔が月光に照らされてよく見えた。男は、自身と同じか少し短くらいの大きな刀を持っている。
視線がかち合った。私から逸らす気は無い。男も、逸らそうとはしない。

「何故そんなことをする? 何か恨みでもあるのか。」
「私ね、一度剣士に斬られたことがあるんだ。」

「復讐か」と男が言った。

「その時ね、私を斬った刀の気持ちになってみたの。」
「は?」
「人なんて、斬りたくないだろうな、って思った。包丁に生まれて野菜とか魚とかを切りたいだろうな、って。」

男が怪訝に眉をしかめる。
頭のおかしな奴、と、目が語っている。

「だからね、だから私、刀を溶かすの。せっかくこんな能力を手に入れたんだから、なんでも溶かせる能力を手に入れたんだから、有効に使わなきゃ駄目だと思って。」
 


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