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「なまえ」
それを口にする時、僅かに違和感を覚える。普通ならさして気にも止めないような、その程度の違和感だ。だが元より神経質な俺には、どうしてもその違和感を放置しておくことは出来なかった。
「どしたの?」
「………」
お前、いつからこの船に乗っていた?
それを訊こうとするとどうしても、言葉に詰まる。いつもならスッと出るはずなのに、だ。
「……何を言おうとしたか、忘れた」
「ふふ、またぁ? 最近多いね、大丈夫?」
「ああ……」
忙しすぎなんじゃない? あまり無理しないで。
とんとんと触れるくらいの力で俺の腕を軽く叩き、なまえはふらりとどこかへ行った。

俺は、いつからなまえがこの船に居るのか、覚えていない。


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