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A

 
「おはよう、シャチ。」
「おー。おはよ。もう昼だけどな。」
へらりと間の抜けた笑顔で笑うなまえに現在の時刻を告げると、なまえは驚いた顔で「もうそんな時間かぁ」と独り言のようにこぼした。
「まだ10時くらいだと思ってたよ。」
「はは、二時間もったいなかったな。」
飯食おうぜ、と誘えば、うん、行く。と、ふわりと笑った。
俺はなまえの笑顔が好きだったりする。歯を見せるなんて下品な笑い方はせず、目尻を下げてゆるく口角を上げて、笑う。「ふふ、」なんて笑い声を出されちゃあもう俺は駄目だ、骨抜きにされっちまう。
「今日のお昼はなんだろねぇ。」
「俺、久々にパン食いてぇ。」
「船長さんがパン嫌いじゃなきゃ、好きなだけ食べられたのにね。」
なんて、他愛もない話をしながら食堂に向かう。
ここだけの話、なまえと話しているとすごく癒やされる。

けど時々、我に返る時がある。
こいつはいつから、この船に居たのだろうかと。けれどそれを訊いたらなまえは、どこかに行ってしまうんじゃないか、なんて考えちまうから、俺はいつまでも訊けないままだ。


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