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海賊団結成時は、確かに片手で足りる数だった。そこから少しずつクルーが増えていき、今では俺を含め、22人だ。
大概が俺に直訴しに来た。断られた者は無理にでも船にしがみついていた。だが俺の記憶では、なまえのようなガキが乗り込んできた記憶は無い。
なまえの存在に気付いてから半年が経った。はじめは気配を感じる程度、次に足音、声、そして姿。
「なまえ」
「…どうしたの、ロー、怖い顔して」
ローと俺を呼ぶ声を、俺に向ける優しい笑みを、俺の頬に触れる柔らかい手を、俺は知らない。
知らない人間≠ネのだ、この女は。何故知り合いかのように錯覚していたのか。
もしもこいつがどこかの海賊船の船員で、この船に送られたスパイだとしたら?このままこの船に置いておくのは危険なんじゃないだろうか。
能力で取り寄せた鬼哭を握る。
「お前、いつ、どうやってこの船に乗った?」
女≠ヘ困ったような笑顔で、「ずーっと」と答えた。


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