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ロー


「ロー、届かない。」

高い本棚の一番上を指差して言う。ローは手元の分厚い本に視線を落としたままこちらを見ようともしない。

「わたしの腕が短くて届かない。」
「お前の背が低すぎんだよ。」
「違う、わたしの腕がいけない。もっと腕が長ければ。例えばこう、伸びたり。」

それはやめとけ、ローが言った。
それ、というのは多分、悪魔の実のことだろう。海の悪魔の化身と言われる悪魔の実。それを一口かじるとその実の能力を得ることができる代わりにどんなに泳ぎの上手い者でもカナヅチになってしまうのだとか。
ローも悪魔の実を食べた能力者だ。
わかってる、と言って棚に手を掛け足を掛け、本棚によじ登る。ローが取ってくれないなら自分で取ろうと思ったのだ。
そして私の中に椅子を使うという発想はなかった。

「あっ、」

腕力も握力もない私には、四段登るので精一杯だったようだ。
ぐらりと本棚ごと体が倒れる。やけに遅く感じられた。

バンッ!

大きな音がしたかと思えば、床に叩きつけられたのは私と本だけだった。
本の雨が止み、顔を覆っていた腕をどける。本棚を押さえていたのはローだった。

「何してんだお前。椅子使えよ、馬鹿か。」
「ローは頭の横にも目があるの?」
「お前の考えることならなんでも分かる。」

さっさと立て、と言いながらローは傾いた本棚を立て、床に落ちた本を何冊か持っては 適当に本棚に入れ始めた。



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