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女海軍


やめてと女海軍が叫んだ。
私に胸倉を掴まれる子供は足をばたつかせて助けてと叫ぶ。気道が圧迫されてか、げほげほと苦しげに咳き込む。

「やめて?何を?」

やめてよと、女海軍はまたも、けれど今度は泣きそうに言った。

「やめてじゃ分からないよ。何をやめるのさ。」
「お願いやめて……その子を離して……殺さないで!」
「私は殺さないで?どうして。この子供に刺されたのに。」

まだ子供よ、と女海軍は悲痛な声で言う。子供の失態は親が責任を取るべきでしょ、と私が返す。
私の手に爪を立てる子供が、親なんかいないと言った。手元を見ると、実に生意気そうな顔をしている。
反抗的な目が癇に障って、子供を投げた。ごろごろと転がる子供に、女海軍が駆け寄った。

「ひどいわ!」
「ひどくないよ。」
「何も、投げることないわよ!」
「殺すな、って言うから生かしてあげているんだろう。だのに、今度は投げるな?注文が多いよね。」

女海軍が差し出した手を子供は跳ね除け、自分で立ち上がるとパッと駆けていった。それを見て、女海軍が少し、悲しそうにする。
どこまでいけば、泣くんだろうか。ほんの一瞬そう考えた。
 


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