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シャチ


これの続き

とある島の岬に来ている。
その岬から、彼女は誤って転落し命を落としたのだそうだ。呆気ないものだと思った。
自分もそうならぬよう足元に気を付けながら下へと降りる。

彼女の遺体は、岬の反対側にある洞窟に辿り着いていた。この島をの周りの海流は変な動きをしていたから、そうなってもおかしくないだろう。
洞窟の中に入る。中は外より大分温度が低かった。そのおかげか、彼女の遺体は然程腐敗してはいなかった。

「迎えに来たよ、なまえ。」

遺体に手を差し出す。遺体は自分の力で体を起こし、立ち上がり、私の手を取った。
それが私の能力だ。

「帰ろうか。仲間が待っている。」

手を引いて洞窟を出た。私の仲間が、洞窟の入り口に小型のボートを付けて待っていてくれた。仲間がなまえを見る。眉間に皺が寄った。

「また能力を使ったのかよ。」
「遺体を乱暴に扱うわけにはいかないからね。自分で歩いてもらえば楽だろう?」
「お前の能力は寿命を削る。」
「あたしは良いよ、この能力に殺されても。……さ、行こう。彼女の仲間が彼女を待っているんだ。」

あたしにもなまえにも、待っていてくれる人が居るのだ。だから一刻も早く、なまえを仲間の元へ連れて行きたいのだ。
それが私の仕事だから。



飽くまで仕事。みょうじは優しい人間じゃぁない。


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