ss | ナノ

シャチ


「居なくなった?」
「ああ……」

ふぅ、と煙草の煙を吐くと 男は煙たそうに顔を顰めた。悪いね、と短く言って椅子に横に座り直した。テーブルに頬杖をついて煙草の煙を吸う。

「なんとか見付けてくれねェか。大切な仲間なんだ。」
「仲間、ね……」

ちらりと男の背後に隠れるようにして立ちこちらを伺う少女を見遣る。不安げな面持ちの彼女は、私と目が合うとさっと顔を伏せた。
彼女の背後の景色が透けて見える。

「悪いけど、あたしにできることは無いと思う。」
「……っ!?なんでだよ!」
「居なくなってなんかいないのさ。」

意味が分からない、と男は言った。居なくなったわけじゃないならどこに行ったしまったんだ、とも。
どうなら男は視えない$l間らしい。ならば背後に立つ彼女に気が付かぬというのも仕方ないのだろう。肺に溜まった息を吐いた。

「そら、もう用は無いだろう。行きな。」

男は暗い表情で席を立った。男が視界から消えぬうちに、ああそうだと思いだしたように声を上げる。

「あたしがこの島に居るのは明後日までだから。何かあったならおいで。」

男は怪訝そうにあたしを見ると同時に、彼女と目が合った。


← →

back
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -