拍手お礼 | ナノ

モブ主

モブ主
爆豪勝己




四時間目が終わってすぐ、そそくさとその授業の教科書とノートをかばんにしまい、入れ違いで財布と次の授業の教科書を出す。筆箱は次の授業でも使うのでそのまま机の中に。
財布を持って友人の席へ向かい、食堂に行こうと誘いをかけた。
「いま金欠なんだよね〜」
「今回はいくら課金したの」
「ん〜〜3万ちょっと」
すいっと視線を逸らしてそんなことをのたまう友人に、思わず「正気か?」と返した。悩んだってことはきっともっと課金してる。おそらく5万かくらい。
腕を引いて廊下に出つつ、肘で友人の脇腹をつつきながら「サバ読んでるでしょ」と言った。
「3万どころじゃないでしょ」
「……きゃっ」
「きゃっ、じゃないんだよね」
「奢れよ〜〜!私ら友達だろ?」
「おふざけあそばせ。300円あげるから購買でパンでも買いなよ」
私は美味しいオムライスでも食べるから、とにっこりすると、鬼かお前はと友人が叫んだ。廊下に出ている人らの視線がこちらに注がれて、私が騒いだわけでもないのに少し恥ずかしく思った。
友人の、今回のイベントのポイント達成報酬がいかに豪華かという話を聞かされながら廊下の窓側を歩いている。
はやく歩いたほうが席をとっておけるのだれけど、そうしないのは、

「あ、ヒーロー科」

ヒーロー科の爆豪勝己が、私のすぐ横を追い越していくから。
いまも。わずかに、私の肩が爆豪勝己の制服に触れる。
彼の個性ゆえか、少し、甘いにおいがした。
いつの間にか足が止まっていたらしく、何歩か先まで行ってしまった友人が振り返って、どうした?と私に言う。なんでもない、とそれに返して、友人の隣に並んだ。
「なんか食堂で食べたいものあるの?」
「そば!あったかいの食べたい!」
「しょうがないな〜」
「なんだよなんだよ、羽振りがいいなあ」
「べっつに、そういうんじゃないんだけどさぁ」


廊下でしか見かけない爆豪勝己を好きになったなんて誰に言えようか。


2017/12/31~2018/08/22
 

back
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -