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無題

俯いたときに、うなじの皮膚を押し上げるように浮き出る頚椎が好きだ。
触れてみたいと思ったことは何度もあるけど、悲しいことにうなじに触れられるほど仲のいい女の友人はいないのである。

寮生活が始まって二週間が経とうとしていた。
お風呂に入ろうと共同スペースに行くと、自室でやればいいものを、寂しくなったのかただ単に居心地がいいのか、幼馴染Aのほう…緑谷が共同スペースで教科書とノートを広げていた。
限りなく小さい音で垂れ流しにしているテレビ番組は、ちょうど月9のドラマの終盤あたりで、ヒロインが二人の男のどちらを選ぶかを選択している最中だった。わりと楽しみにしていたので盛大なネタバレ(ではないが)を踏んで些か悲しくなる。
緑谷とテレビを横目に見て、長居しはじめないうちに浴室へ歩みを進めた。

お風呂からあがり、未だ濡れたままのタオルで髪を拭きながら共同スペースに戻ると、緑谷が未だそこにいた。
30分ほど前に見かけたときよりノートはずっと埋まっていて、教科書のページも変わっている。
横に立って、ノートに影ができないよう注意しながらノートを覗き込む。ぶつぶつと、ほとんど彼の癖である呟きが発せられていることにびくっとする。幼馴染であるからもうそういったことに何か、驚くとかそういったことはないけれど。久々に聞くと、まあ、少し引く。
集中しているおかげで、すぐ横にいる私に気づいていない。いたずら心も湧くというものだ。
緑谷の背後に立って、そっとうなじに手を伸ばす。ひとつ浮き出た骨に触れ、下の方に指をすべらせると、うわ、と声をあげて緑谷がこちらを振り返った。
「びっくりした、なにするの」
「随分集中してるようだから、驚かしてやろうと」
ふふふ、と笑うとやめてよとすこし怒ったように緑谷が言う。
「また今度数学教えてよ」
「なまえちゃんすぐ集中切らすからやだよ」
「だって緑谷の声が子守唄みたいで…」



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