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白昼夢

 
 歩道を歩いてたら誰かに背中を押されて車道に飛び出したら乗用車にバーンされ、次に目を開けたら周りは壁も天井も床も無いような真っ白な空間でしたとかいうベタな体験をした私ですが、そんな私を二次元のキャラが見下ろしていたなんて誰が予想できましょうか。

「ペンギンさんじゃないですか」
「知ってるのか」
「ワンピースに出てくるハートの海賊団のクルーでしょ? 知ってますよ大好きです」
「どうやら人違いをしているようだが俺は神だ」
「髪」
「頭髪じゃなくて神様だ、信仰するほうのな」

 あ〜〜、どうやら自分で神様を自称しちゃう程度にはイタイ人のようだ。厨ニ病よりイタイ。骨折くらい痛いかもしれない。アイタタタ。
 うわぁ帰りたい、帰ってベッドに寝転がって夢小説を読みたい、画面の中のペンギンに会いたい。

「イタイ人じゃん引くわ(神様なんて本当に居たんだ…)」
「本音と建前逆だぞ、お茶目さん」
「人の心を読めるとは…流石髪」
「イントネーション違うって。あと俺は人の心は読めない。顔に出てるんだよ」

 自称神(笑)のペンギン(同姓同名ってやつだと思う、最高に嫌だ)が顔を両手で覆ってしまった。
 なんでこんな子を死なせたんだあいつは、とか、やっぱり俺が選んだ子の方が良かったんじゃ、とかブツブツ聞こえるけど心が抉られるけどきっと気のせい。空耳だって信じてる。あっほら私ってば耳が悪いから。

「あー…非常に言いにくいんだがどうやら間違えて君を死なせてしまったらしい」
「どこが言いにくいんですか、清々したって顔してますけど」
「そういう訳だから、時間を戻して全てを無かったことにするか、別人として生まれ直すか選んでくれ」
「おふざけが過ぎますよ、そんなんで私が満足するとでもお思いですか。せめて貴方の御尊顔を拝んでからでないと貴方の条件は呑みませんから」
「顔を見せれば呑むのか」
「当たり前です、まだやりたいこと沢山あるんですから」

 ママの手料理あと100回くらいは食べたいし友達とカラオケ行きたいし、彼氏もほしいし、ゲームもしたいし、今週のアニワンまだ観てないし、本誌だってまだ完結してないし、一人暮らしもしてみたいし、犬も飼いたいし、服も欲しい。
 やりたいことを指折り数えて、自称神様を見上げる。

「あっでもペンギンと生で話せたから、今別に死んでもいいかもしれない」

 言い終えた瞬間にぐにゃりと視界が歪んで、私はいつの間にか、事故現場にいた。
 人の話聞かないやつだな、と呟き、今度は事故らないように車道にから離れて歩く。もしかしたらあれは白昼夢ってやつだったのかもしれない。

加筆修正、2018/04/12



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