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爆豪に求婚されたい

※年齢操作

鬼の居ぬ間の洗濯とはよく言ったもの。爆豪がトイレに行っているすきに、スマホを操作していた私はカレンダーアプリを開いて首を傾げていた。
今日の日付に、印が付いているのだ。今日はいったいなんの日だったろうか。休日ではないし祝日でもないし、学校行事もバイトもない。
うんうんと唸っていると、はっと頭の中に六文字の単語が浮かび上がる。
ウワッと声を上げて立ち上がった拍子に、椅子を背後の壁にぶつけた。その音に、たった今トイレから戻ってきた爆豪と、他の利用者らが私を見る。少し恥ずかしくなってまた椅子を引いて座り直した。
「騒いでんじゃねぇよ図書館だぞ」
「聞いてください」
「シカトか」
爆豪を無視して話を続ける。
「私、今日、誕生日です」
「くっだらねぇ」
爆豪が舌打ちしながら定位置である私の前に腰を下ろす。相手にしてもらえなかった悲しさから、さっきから目を背けていた課題へと向き直った。
今日誕生日だからという理由で缶コーヒーを奢ってくれたり、今日誕生日だからという理由で爆豪が課題を手伝ってくれたり。なんて、そんな甘い展開にはならなかった。
いつもどおり静かに自分の課題をでかしていつもどおりしごかれた。
ちなみに、今日誕生日だからケーキが食べたいなーと冗談半分で言ったら、舌打ちをしてシネと言われた。誕生日にシネと言われる悲しさといったらない。

閉館の時刻が来たので図書館を出たところで爆豪に腕を掴まれ、コンビニに連行され、爆豪の家に連れ込まれたわけですが。
なんで私は爆豪の部屋で爆豪と、酒を飲んでいるのでしょう。まったく意味がわからない。いや付き合ってるからべつに爆豪の部屋に来るのはなんらおかしいことではないのだけれど。
酒はうまいしつまみも美味いが。テレビもついていない部屋で爆豪と二人きりなのだ。キツイにも程がある。なんだこの空気。いくら酒飲んでシラフじゃないとはいえキツイわ。
「おい、つまみ切れた」
「アッハイ買いに行きますよ爆豪様」
「は? つくれよ」
「マジか〜〜〜」
仕方なしにキッチンに向かうと、なぜだか爆豪も着いてきた。
なんだよなんだよ、実家で飼ってる犬みたいじゃないか。でも私はシェパードよりかラブラドールのほうが好きなんだ、ごめんね爆豪。あんたは警察犬向きのシェパードだ。
適当に冷蔵庫を開けるが中はからっぽだった。申し訳程度の調味料くらいしか入ってない。あと牛乳。
「つくれって言ったって中からっぽだよ」
「あー…」ぼうっとどこか宙を見つめて爆豪が気の抜けた声を出す。
買いに行こうよと提案すると、ジャンパーを羽織った爆豪が自分の上着を投げて寄越した。素直にありがとうを言って腕を通すと、思ったよりがぼがぼだった。私のチビ加減を身にしみて感じた。
財布を持って爆豪のクロックスを勝手に履くと後頭部をごつりと殴られた。あまり痛くないのは加減してもらっているのかなんなのか。


結局終電は逃したし、私の金で追加のおつまみを買わされたし、袋は私が持たされた。大して重くはないからいいんだけど。いいんだけどさ。
「べつにさぁいいんだよ。私が袋持ったって。でもさぁそこはさぁ、爆豪が「俺が持つぜ」って超絶イケボで私を優遇してくれるところじゃん? いやべつに重たくないからいいんだけどさぁ」
「重くねぇならいいだろ、はよ歩けブス。さみぃんだよ」
「うっす」
知ってるさ、君がそういう男だってことは。
私も爆豪も、口数が多い人間ではない。よって話題がなくなれば会話が途切れるのは必然とも言えた。
しばらく会話のないまま爆豪宅への道を二人並んで歩く。
車も通らないような時間帯だというのに、爆豪は車道側を歩いている。変なところで発揮される優しさに、笑いがこみ上げる。ひとりでにやにやしていると、にやつくなキメェと爆豪が仰られた。辛辣が過ぎる。
「もう日付変わったんだけどさあ、誕プレ要求してもいいよね?」
「ハア? 誕生日でもねぇのに図々しいな」
まったくもってそのとおりですわ。
少し項垂れていると、寒いからと上着のポケットに突っ込んでいた手を引っ張りだされた。そのまま爆豪が立ち止まるものだから、手首を握られる私も立ち止まらざるを得なくなる。
手首を掴んでいた手がするすると指のほうへと移動してくる。左手の薬指の付け根を何度も撫でる。
「え、なに…」
「……来年までもう少し痩せとけよ」
「ン〜〜〜〜〜この上ない暴言」
「卒業して安定した収入を得られるようになったら貰ってやるっつってんだよ」
「一言も言ってないよ爆豪」



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