察大人の事情ってやつだよ、そこは。察しろよ、日本人だろ。
「おにーさんなんで着いてくるの」
「別にいーじゃん、黙って歩けよ」
金色の前髪で目を隠した背の高いおにーさん。外国の人。名前名乗られたけど長すぎて忘れた。ベルなんとかさんだった気がする。そしてイケメン。そんなおにーさんに私は今跟け回されてる。どこに行くにもうしろにおにーさんがいるから落ち着かない。非常に迷惑だ。
「おにーさん仕事何やってる人?」
「教えねー」
おにーさんは絶対に私のうしろを歩く。なんかもうこの人背後霊なんじゃないかって思えてきた。隣歩けばいいのに。私の右手いつでも空いてるのに。あああウソウソ、やっぱなし!
「おにーさん名前なんだっけ?」
「さっき教えたろ」
「忘れちゃった」
「ベルフェゴール」
「べるふぇごーる」
「覚えろよ、もう教えねーからな」
ズボンのポケットに手を突っ込んで私の真後ろを歩く。もう夕方だけどお前家帰んねーの、って。あなたが着いてくるから帰れないんですって言ったら怒るかな? 怒られても私悪くないよね?
「おにーさんどこの人?」
「聞けよ。イタリア」
「イタリア人は味覚おかしいってホント?」
「王子の味覚がおかしいわけねーだろ、バカか」
王子だって、この人王子様なんだ。へえー。
おにーさんをうしろに従えたまま家の近くの公園に来た。小さい子が遊ぶようのブランコに座ったらすごく低かった。これじゃあ漕げない。
「おにーさん」
「なんだよ」
「おにーさん家帰んないの?」
「あー、お前が帰ったら帰る」
「へー、大変だね。なんのお仕事?」
「だから教えねーって」
「じゃあおにーさん、なんで前髪伸ばしてるの?」
「大人の事情ってやつだよそこは。察しろよ、日本人だろ」
Made in Alice*様よりお借りしました。
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