無題
Type25を小脇に抱え、銃弾が飛び交い、時折死体の転がる戦場を、建物目指して走っていた。
物陰から飛び出し走っていると、時折私がかぶるヘルメットに鉛球が掠める。そのたびに、次は死ぬ次は死ぬ、ああまだ死にたくないとネガティブな考えばかりが頭をよぎった。
建物間の距離はさして広くはないが狭いわけでもない。移動している隙を狙って撃たれ、死ぬこともある。はたまたビルの屋上に出てヘッドショットを狙っているところを敵に撃たれたり、なんてこともしばしばだ。
やっと辿り着いたビル内に転がり込むように身を隠す。けれどまだ油断は出来ない。味方や敵がビルを崩せば私は死ぬし、ビルの中に敵がいれば殺される。
即座に立ち上がり体勢を整える。銃を構え、足音を立てないように内部へと歩みを進める。
まずは入り口から離れなければと思い、入り口から少し離れた壁際に設置されたカウンターへと近付く。
少し背の高いカウンターに手をかけ足をかけてのぼり、人が居ないことを確認する。確認したのちカウンターの中に飛び降りてしゃがみこんだ。
ああよかった、私はまだ生きている。
安堵し、肺に溜まった息を短く吐いた。
瞬間、「ジャコッ」なんて音がヘルメット越しに私の頭に突き付けられた。かつ、と硬いもの同士が触れる音がし、安堵した私に死の恐怖を突き付ける。
「油断は禁物だぜ。」
聞きなれた声が頭上から落とされた。硬いものがヘルメットから離れる。振り返れば、そこには幼馴染が居た。
殺されるという緊張から解放された安堵で笑う膝を叱咤して立ち上がり、カウンターを挟んで幼馴染と向き合った。
「びっくりさせないでよ、ロー」
「脇目も振らず建物に走っていく馬鹿が見えたもんで、ついな」
崩れたら危ねぇぞ、と外に出ようと私を促すローに着いていくべく、カウンターに手を着いて乗り上げる。
飛び降りて、幼馴染の二歩後ろの距離をキープして歩く。幼馴染はちらりと私を見ただけで何も言わなかった。
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