雪月花

 なにがなんだか分からないまま、オレのチーム加入は認められたらしい。

「ハンッ、好きにしやがれ」

 そう言った金髪の男を筆頭に、黒髪の男、ちっさいのとおっきいのの2人組は立ち去って行った。
 正直死ぬ覚悟も出来ていた。なので、ホルマジオと呼ばれる坊主の男の膝の上でココアを飲んでいるこの現状に、あまり納得がいかない。

「よかったなー」

 こいつのことは、嫌いじゃあない。
 「死ななくて」と優しい手つきで頭を撫でられた。少しだけ甘えてそれに擦り寄っている間も、くるくる頭のメガネはオレを睨んでいる。

「『納得』したわけじゃあねえからな」

 オレに負けず劣らず目付きが悪い男は、感情を隠すことなく言い放った。そういうのも敵ながら好印象。
 まあ敵じゃない。これからこのチームで働いていく上でこいつは同僚だし、オレとしても相手さえよければ仲良くしていきたいと思ってる。

「なんだよ」

 そんな思いを込めてしばらく黙って見返していると、唸られた。まるで野生動物みたいだけれど、瞳だけがヤケに理知的だ。

「仲良くしようぜい」

 友好の証に贈るVサイン。

「バッカじゃねーの?」

 しかしあっさりと吐き捨てられる。
 後ろのホルマジオは、それを盛大に笑った。拗ねたふりをして体を預ければ、頭上の手が再び髪を撫でてくれる。

「フラれちゃった」
「おれなら、仲良くしてあげるよ?」

 さっき話した限りかなり危ない感じの男が、そう言ってこちらににじり寄ってきた。サラリと揺れたアシンメトリーの髪の毛は、甘そうな蜂蜜色。

「ん、よろしくな」

 愛想よく答える。男はめちゃくちゃ形容しがたい笑みを浮かべ、片手をさし出してきた。

「おれはメローネ。バンビーノ、君の名前は?」

 じっと、全てを見透かして尚知らない振りを決め込む瞳。怖いくらいに綺麗だ。
 そんな怯えを隠そうと、オレはメローネの手を強く握る。

「ロゼット。バンビじゃなくてフィオーレ」
「Diavolo!よろしくな、ニャンニャン」

 この野郎……!

「喧嘩うってんの?」
「まっさかー!」

 口を歪めるオレに、「なんでおれが?」と肩をすくめると、男は順番に仲間を指差していく。 

「今君を抱いてるのがホルマジオ、そこの短気なお兄さんはギアッチョ。さっき出て行った金髪がプロシュート。黒髪がイルーゾォ、ちっさいのがジェラートで、おっきいのがソルベ」

 メローネはそこで一旦言葉を区切って、先程からまったく言葉を発さない長身の男を振り返った。
 白と黒が反転したような瞳、へたれなのかマジなのか分からない性格。
 
「あれが、我らがリーダー、リゾット・ネエロさ!」

 それと、変な帽子。

「……俺は、君を歓迎しよう。ロゼット」

 むっつりとした表情は、石を噛んだ時のように険しい。
 こうして、オレの前途多難な『アサッシーノ』生活ははじまった。
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