依然変わらず、無知なる奴隷
「オレは、反対だぜ」
「お……おれも……」
ギアッチョとイルーゾォは、正反対の瞳でリゾットを見つめる。プロシュートもそれに同意するかのように、黙って手を上げた。
「新しいメンバーなんて必要ねえし、オレはこいつが気に食わねえッ!」
「……」
噛み付かんばかり距離で子供を睨むギアッチョ。イルーゾォは怯えたように視線を下にやる。
異を唱えたのは、今まで笑みを浮かべていたホルマジオだ。立ち上がった男は、ゆっくりとした足取りで子供の後ろに立ち、
「いいじゃねえか。面白い」
優しげな表情のまま、言葉を失ったそれを抱きしめた。随分と『ソレ』が、お気に入りなようで、慣れた手付きで子供の髪を梳く。
「イカレてンのかよ!ホルマジオ!」
「マスコットは必要だろー?」
「マスコットはいらん……。しかし、能力によってはこいつも役に立つかもしれない。そうすればお前らの負担も――」
「どう考えてもお荷物だと思うけど?」
眉間に力の入ったリゾットへ、ジェラートはそう言って嘲笑を浮かべた。その通りだと思う。
どんなに聡かろうが、子供は子供だ。
「ジェラートも……反対?」
「ソルベもだよ」
ね?と見上げてくる相棒に、俺は黙って頷く。
「5対2ー。否決でしょ。さっさと始末しちゃおうよ」
「ちぇー……じゃあ、おれが貰ってイイかぁ?」
なすがままだった子供の体に、力が篭る。こちらもいつでもスタンドを出せるように、意識を張った。
この人数で、とういうか俺らの誰か一人でも十分だとは思うけれど、未知数の生き物への警戒は強くあるほどに越したことはない。
「しかし……本部からの命令だぞ」
リゾットは特に感情もなさげに呟く。
「ああ!?別に『ここにたどり着く途中で殺されました』でいいじゃねえか!」
「リゾット。面倒ゴトは、ゴメンだぜ」
「ああ、だが……」
「あー!笑った笑った」
未だヒーヒーと楽しそうにしていたメローネは、会話を遮り「なに揉めてんの?」と首を傾げた。
「さっきからさあ」
「それはテメー――」
「この子がチームに入っただけで、『ナニ』が変わるって言うのさ」
理解出来ないというような、白紙の表情。それに俺たちは、夢から覚めたように目を見開いた。
愚かな期待を掛けていたのはどちらか。つい、顔が強張る。
「だろう?」
満足そうに、男は紫紺の瞳を歪めた。
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