ボス犬と恐竜猫




「どうしたの二人とも。可愛すぎて、俺どうにかなっちゃいそうなんだけど」

 オペラは喜びに、微かに肩を震わせた。両手に花、とは少し違うのだろうか。青年の両サイドに腕を絡ませるのは、雛稀なる美少年二人。
 彼の大事な弟分はその美しい顔に怒気を貼り付け、互いに火花を散らしている。

「今日オペラさんは、僕と、食事を取って、出かけるんです」
「別にそいつがどんな予定を組もうが勝手だ。だが今日は、このDioの荷物持ちとして付いて来るんだ」

 なんのことはなく、どちらと買い物に行くかと言い争っていただけだった。
 オペラの外出が許されたのはそれこそ数少なく、三者三様に浮かれてた。

「三人で行こうよ」
「駄目です」「駄目だ」

 オペラの申し出は瞬時に断られ、

「荷物持ちって貴方、オペラさんに何させるつもりですか」
「俺が俺の下僕をどうしようと、お前に文句を言われる筋合いはない」
「下僕は貴方でしょ恐竜」
「……消えろマフィア」
「引っ込んでろトカゲ」
「黙れチンピラ」
「失せろ愚民」
「くたばれコロネ」
「爬虫類臭いんでオペラさんに近づかないで下さい」
「お前あいつ譲りのゲロ以下の匂いがするんだよ」
「お前はそれ以下と言うことですか」

 スタンド使い同士の口喧嘩が口喧嘩で終わる筈もなく、空気はどこまでも険悪になる。加速する罵詈雑言。今にもラッシュを繰り広げだしそうなゴールデン・エクスペリエンスと恐竜化の進むディエゴ。
 それでも、オペラはニコニコと二人の間でその様子を眺めていた。彼にはこれが子犬と子猫のじゃれ合いにでも見えているのだろう。

「ここは本人の意志、を尊重しませんかディエゴ」
「何故このDioがオペラ如きの意志を尊重しなきゃいけないんだ」
「自信ないんですか?」
「俺がそんな安い挑発に掛かると思うのかい?」
「まさか。ただの本心ですよ。……それとも、怖いですか?」
「……いいだろう。オペラ、貴様に選択肢をやる」

 お互いに向けていた視線をキッと青年に向け、

「オペラさん!僕とこいつ、どっちが好きですか?」
「オペラ!俺とこいつ、どっちが好きだい?」

 両脇から今にもキスしそうな程に顔を近づけ、二人はオペラに詰め寄った。弟扱いを嫌がる割には随分可愛らしい質問だ。
 青年は嬉しくて仕方ないというように顔を綻ばせる。

「両方。二人とも大好きだよ。ほら、喧嘩してないでご飯にしよう」
「オペラさん!」「オペラ!」

 二人は真剣に聞いているのだと声を張り上げた。しかし、オペラは変わらず穏やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと首を傾ける。

「仲良くできない子にはデザートなしだよ」

 ジョルノとディエゴの顔には血が上った。


子供扱いやめろ

「もういい、勝手にしろ。俺は寝る」
「ディエゴくん」
「放っときましょう。あんな奴」

 微笑んで、さり気なくオペラの肩を抱くジョルノ。勝因は忍耐、だろうか。

「折角ディエゴくんの好きなハンバーグも作ったのに」
「だからガキ扱いするんじゃあないッ!!」
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