欠乏症と9栄神-2

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「お……女の子……」

 ぐったりと食卓に伸びるオペラ。
 健全な青年としては普通の、この一言から、全てが始まった。


【ンドゥールの場合】

「この女好きめ」
「ンドゥールは、女の子触りたいとか思わないの?」
「オペラは触りたいのか?」
「女の子不足すぎてかたつむりなら雌になれるレベル」
「オペラが女なら、触りたい」
「奇遇だね。俺もンドゥールが女の子ならこのまま抱きしめて離さないよ」
「……」
「照れた」


【テレンス・T・ダービーの場合】

「実際に貴方が女性に手を出したら……言いにくいのですが」
「……うん、分かるよ。アレだろう?」
「ええ、彼です」

 そう言って取り出したのは、眼球が肥大した変型学生服に身を包む女の子がパッケージに描かれたゲームソフト。

「という訳で、とりあえずバーチャルで満たされては如何でしょうか?」
「テレンスくん……」

 青年は侮蔑よりも哀れみの色の濃い瞳で執事服の男を見つめるが、いつまでも顔色の変わらない彼に、根負けしたようにそれを受け取った。
 説明書では赤、ピンク、緑、紫と、色とりどりの髪色の少女たちが様々な媚態を示している。

「名前入力か。オペラ、っと」
「オペラさまはどなたがお好みですか?」
「う、うーん。強いて言えばこの黒髪の子かなあ」
「ツンデレですか」
「え、ツンドラ?」

 かちりかちりと進めていくと、オペラが選んだ少女が頬を染め画面に現れた。

「この顔は可愛いね」
「I see」

 そうして現れるいくつかの選択肢を選んでいくうちに、

『オペラ、早くしないと置いていきますよ』
「しゃべった!」 
「フルボイスではないですが、要所要所でしゃべりますよ」

 あははイントネーション面白いね、と笑う青年ははじめよりノリ気でゲームを進めていく。

「声可愛い」
「こういうのがお好みですか」
「うん、敬語ってのがポイント高い」
「そうですか……」
「テレンスくん照れてる?」

 しかしゲームを初めて20分というところで、

「……触れない」
「ゲームですから」
「……目が合わない」
「ゲームですから」
「匂いもしないーーー……!」
「ゲームですから」


【マライヤの場合】

「一回、ハグさせて」

 手を握りしめて、熱い視線。

「飢えた男は見苦しいものね」
「駄目?」 
「私の体は頭から爪先までDIO様のものなの」
「今日ほどあいつが憎いと思ったことはないよ」

 こうして、本人の知らないところでDIOへの印象は悪くなっていく。


【ペットショップとキャラバン・サライの場合】

「アニマルセラピー……」

 青年は二匹まとめて抱きしめるが、しばらくすると――

「獣臭い……ああごめん!ごめん!」

 啄かれ切られ氷を出され、吠えられた。


【アレッシーとダニエル・J・ダービーの場合】

「女の子の柔らかい体が恋しい……甘い香水とシャンプーの匂いが愛しい……!」
「んーっ、子供の体もやらかいよお」
「それも捨てがたいけど!」
「オペラが言うと微笑ましいのに、アレッシー、貴方が言うと犯罪臭さが隠せませんね」
「酷いねえー」

 そう言ってアレッシーは顔を少し引きつらせ、

「『セト神』」
「きゃー!ダニエル可愛いよお!!」
「ちょ、ちょっと、オペラ顔が近いですよ!」
「ほっぺふにふにー」
「おれってえらいねえ〜〜」
「えらい!この勢いでDIOも子供にしてきて」
 



「それは無理だねぇ〜」
「You can do it!」
「どうでもいいので戻してください」
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