こどもときょうき




「見ろハルノ!私とオペラの子供だ」
「無駄ァッ!!」



 ※ジョルノ君怒りのラッシュが終わるまで、しばらくお待ち下さい。



「ハアっ……ハアっ……」

 チョコラータへのラッシュをも越える壮絶な連撃の後、ジョルノは父の抱いていた子供の顔を見つめる。肩で荒い息を続ける彼を、子供は心配そうに眉をひそめた。

「ハ……ハルノ……!この、DIOでなければ、今のは、死んでいるぞ……!」
「死ねばよかった」

 息も絶え絶えな父に、息を整えたジョルノは冷たく言い放つ。
 腕の中の子供は、彼の敬愛する青年そのままの髪色。そして理知的で穏やかな眼差しは、幼いながら確かにオペラのものだった。
 おそらく、DIOの部下アレッシーによるスタンド攻撃なのだろう。
 
「オペラ……さん?」

 8歳ほどになった小さな青年に向かって、躊躇いがちに名前を呼べば、

「なんで僕の名前を知ってるの?お兄さんは誰ですか?」

 あどけない甘い声音。首を傾げた蕩けてしまいそうに愛らしい表情は、どこまでも純粋無垢。
 子供を抱えた少年は、はうあッ!と情けない声を出し膝を着いた。

「こ……これは……ッ!」
「どうだ、たまらんだろう」
「だからなんであんたがドヤ顔なんですか……ッ!」

 両名、美しい白面を僅かに赤く染める。
 ここで断っておきたいのが、この親子が決してこども好きではないという事実だ。

「こんな隙だらけのオペラさん、初めて見る」
「ふふふ、悪くない。悪くないぞオペラェ……ッ!」

 うっとりとした表情。乱れた呼吸。
 金髪の美丈夫と少年のそんな姿というは実に扇情的である。

「このままじゃあ抱くことも出来ないがな」
「そういう常識はあるんですね」
「裂けるだろう。スタンドもなさそうだし」
「スタンド……ッ!」

 が――、中々不穏な空気だ。

「本当に、無防備なんですね……!」

 やにわにギラつくジョルノの瞳は、切迫した光を放つ。
 会話に置いてけぼりを食らった青年モトイ子供は、新雪のような柔らかな頬を傾けた。どうやらオペラは幼いころから物怖じのしない人間だったようで、甘やかな色の大きな瞳で二人を真っ直ぐに見つめる。

「お兄さんたちは、何を話してるんですか?」

 吸い込まれそうな、濡れた双眸。

「……この際子供でも」
「落ち着けハルノ」
「貴方に言われるとは思いませんでしたが、落ち着きます。というわけで、さっさと戻してください」
「嫌だ!もう少し小さいオペラで遊ぶのだ!」
「このド外道がッ!!」
「こんなに懐いているんだぞ!」
「アンタは何を教え込んだんだ!」
「人聞きの悪いことを言うな!ただの命の恩人だと名乗っただけだ!」
「掠りもしていないッ!」

「二人とも」

 親子喧嘩という可愛らしい響きでは到底表しきれない殺伐とした空気を、今まで黙っていたオペラの高い声が遮る。

「僕、眠たくなっちゃった」
 

My Sweet Heart



「ねえ、パードレ」

 振り向いたハルノは腕の中で眠ってしまったオペラの顔を、酷く優しげな表情で見下ろしてから、

「このままオペラさんを育てたら」

 私によく似た笑顔を浮かべる。

「きっともうここから出ていきたいなんて、言いませんよね」

 柔らかな声音はまだ未成熟で、時折掠れるような不安定さ。
 それにしても、息子よ。なんて戯言を。お互い、嫌というほど分かっているだろうに――。

「冗談ですよ……それはもう、彼じゃあない」

 擬物では、満足出来ないことを。

「元に戻ったら、どうやって機嫌をとりましょうか」
「キスでもしたら治るだろ」
「妄想も程々にして下さい」
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