悪夢  





なにもかもが白いその世界
建物も服も差し込む光さえも

そんな真っ白な世界で、俺は―俺だけが穢れている

『いい子だね、藤崎』

俺の頭を優しく撫でるその掌とはまるで別物のように、蔑む声が聞こえた

口いっぱいに広がる何かを俺は懸命に愛でる
いや、愛でてなどいない
そもそもこの行為自体に愛は無い

『零さず飲めよ』
その声が聞こえた途端、後頭部を強く押され何かがさらに口の奥へと入る
むせ返る暇もなく口内で吐き出された何かを、躊躇いつつも飲み干した
嫌悪感に顔が歪む。
ようやく開放された唇を自身の腕で拭った
強く強く―まるで痕跡を無くすかのように

彼の指が顎を掬い半ば無理矢理上を向かされる
そこには本当に俺を見下しほくそ笑む笑顔が見えた

もう嫌だ。こんなのは嫌だ。なんで俺はこんなことをしているんだ。なんでこんな…――

『ご苦労様』
もう一度いう、この行為には愛はない
そもそもお互いに愛情がない
俺はただの下僕だ。彼のただの玩具だ
助けて欲しい。誰もでもいいから助け出して欲しい。誰もが傷付かず、誰も苦しまない世界へ

彼の指が顎から肩へ流れる
強く押された拍子に俺は背中を地面へと預けた
そして膝裏を持たれ、全てを晒すように左右へと開かれる

『ご褒美をあげないとね』
彼の体が近づく

怖い、怖い恐い恐い怖いコワイコワイコワイ…

ぐっと何かが孔へと当てられる
体が強張る
体中がガクガクと震え悲鳴を上げる
激痛と共に入り込んでくるソレに、俺はただただ恐怖と苦痛を感じた

『や…ぃや…』
やっと出た俺の声はとても小さく子供のようで
そんな声など聞こえないように目の前の男は笑みを浮かべながら結合部分をさらに深くしようとする

彼の舌が自分の唇をペロリと舐めた


そして何かが一気に俺の中へと――



「…や…やめろっっ!!!」
絶叫とも取れるその声で俺は目を覚ました
見慣れた自分の部屋の天井が目に入る

「ゆ…め…?」
先ほどとは違う風景に、さっきまでのは夢なんだと理解するまで少しだけ時間がかかった

まだ鼓動が早い心臓を落ち着かせるかのように深く深呼吸をした
服が肌に張り付くくらい沢山かいていたらしく汗が気持ち悪い


何故あんな夢をみたのだろう
もう随分見なくなっていたのに


きっと、アイツの所為だ
アイツが、アイツが俺に構うから

『今日だけでいいから、俺とずっと一緒にいて――』

「…しま…かしまっ…」

アイツの声が脳内に響く、俺はうわ言のようにただただアイツの名前を呼び続けた
震える体を強く抱きしめた――悪夢を消し去るように




2013.10/7






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