フラストレーション


芸能人との恋
誰もが一度は願う淡い夢



俺の好きな人・恋人は芸能人である。
この世を賑わかしている結城 刹那(ユウキ セツナ)こと有島 祐希(アリシマ ユウキ)は超売れっ子俳優である

幼い容姿に高い声、淡い茶色の髪、さらさらの素肌、低い身長、大きな瞳。

皆が大好きな彼を独り占めしている俺はさぞかし裕福な人間だろう


だが――‐


『紫那(シナ)、ごめんね。。 今日のデート、だめになった』

 ああ、またか。

『急にね、仕事が入ったの。 ごめんね』

「いいよ。頑張れよ」

 こんなこともう何度もあった

『ありがとう、紫那。また連絡するね』

売れっ子俳優の祐希と普通の学生の俺では、立場が違いすぎてすれ違いが多い
それならばいっそ、同じような立場の学生と付き合いたい。

だけど、それは出来ない
俺は困ったことに祐希を本気で愛してしまっているからだ。

そんな俺と祐希の出会いのキッカケは兄の仕事の関係でテレビ局にいったことだ
俺の兄貴はそのテレビ局にあるカメラスタジオで雑誌の表紙を飾るような写真を撮っているカメラマンだ

俺はその日、兄貴の助手(ただの荷物もち)としてスタジオに入った
そこにはまだ売れる前の結城がいた

小さくてか細くて、白くて淡くて……俺は一目で恋に落ちてしまった

「結城さーん、こっちに視線くださーい」

兄貴の言葉通りに動く結城だけど、動きはまだまだ固かった

「結城さん緊張してる?少し休憩とる?」
「い、いえ!大丈夫です!ごめんなさい」

泣きそうな顔。
必死で売れるチャンスを逃さないようしがみついている

「謝ることないよ。 この仕事は初めてかな?」
「あ、は、はい。」
「じゃあ緊張して当たり前だね。休憩をとろう」
「え!?」

兄貴がカメラを手放すと、結城はガックシと肩を落とした
その姿を見たからなのか、俺の足は勝手に結城の元へと向かっていた
薄着の結城にそっとジャケットをかける

「安心しな。兄貴はあんたをちゃんと撮るよ」

不安で揺れていた瞳が、俺の言葉で少し光が映った

「あなたは…?」
「俺はあのカメラマンの弟の藤咲 紫那」
「しな…」
「あっちに座ろう。クッキー好き?」
スタジオの端に設けられたスペースには椅子と机が置かれていた

「クッキー…大好き!」
漸くみせた本当の笑顔に俺は思いっきりやられてしまった

それを期に俺と結城はメールで連絡を取り合う仲になった

そして
冬のあの日―…初めて祐希とキ……
「紫那!おい紫那!」
「っ!」
目の前にいる兄貴の声に俺の回想は砕け散った

「んだよ兄貴!いいとこだったのに」
「なにがいいとこだ!バイトはどうした」
「今日は時間変更があって一時間後からだよっ」

俺は近所のコンビニで働いている
この前入ってきた新人(といっても俺より年上)にいろいろと教えなくてはいけないから最近かなり忙しい。

祐希とも、あの電話以来メールもなにもしてねえし…。毎日あったのにさ。

祐希は俺のこと好きなんだろうか


この前も

「祐希…」
「紫那……」

いい雰囲気になったのにさ

『♪♪♪〜』

「あ、ごめん。マネージャーから電話だ。 …もしもし??」

普通に電話出て帰るしさ

もう俺のことなんてどうでもいいのかもしんない

だからメールも、電話も来ない

俺からかける?
いやいや、そんな女々しいこと、してたまるか

「次はそうだな、レジの打ち方教えようか」
「お願いします」

早く覚えて貰わないとな!

「まず、これでバーコードをスキャンして、出た値段をいう。 例えば一点なら『一点で120円です』って」
「はい」
「そんでお金をもらう。『150円お預かり致します』150と打つ。 最後にこのボタンを押してお釣りを言って渡す。それが基本」
「わかりました」
「徐々に覚えていくといいよ。」

さ、あと二時間で終わる!頑張ろー!

「紫那」
不意に呼ばれてレジの外を見ると、帽子を深く被った結城が

「ゆ――っ、ちょ、ちょっとレジお願いします!」
「はーい」

俺は一目散に結城の手を引いて店の外に出た

「なに考えてんだお前!マネージャーも付けないで」
「だって!紫那に会いたかったんだもん。 あのね、紫那…」
「だからって来んなよ!つかなんでバイト先知ってんだ!」
「…調べた」

調べっっ!!?

「迷惑だった?」
「ああ!迷惑だよ!さっさと帰れ!」

人のこと勝手に調べただと!?ふざけんな!

「……紫那…俺のこと、ホントに好き?」
「今はそういう話をしてるんじゃないだろ!携帯貸せ!マネージャーさんに迎えにきてもらう!」
「…………俺、紫那のこと、わかんなくなってきた」
「わかんないって、俺はなにも変わってない!」

マネージャーも無しにこんなとこにきたら、見つかったときに結城が危ないんだぞ!それがわからないのかよ!

「……紫那……」
「早く携帯貸せ、連絡を」

突然、祐希が俺の胸に飛び込んできた

「ゆ…」
「紫那……紫那の…か…」
「は?」
「紫那の、ばかあああ!!!!」
「ぐふっ!!!」

思いっっっくそ鳩尾にパンチを喰らわして、深い闇の奥に結城は消えていった



「結城!どこにいっていたんだい!」
「ごめ…なさい」
「どうした?泣いてるのか」
「………」

 紫那……


『ああ!迷惑だよ!さっさと帰れ!』


俺は紫那にとって、迷惑な人間なんだろうか。

そうだよね、デートは断るわ、エッチはしないわ、……ダメな恋人だ……

紫那……俺、もう、紫那に迷惑、かけないから



「………」
言い過ぎたかもしんない。
祐希は俺に会いたくて来たのだ。
なのに俺は酷い言い方で祐希を傷付け、追い返した

とりあえず、謝ろう。そして、仕事頑張れよって言ってやろう

俺は携帯を手にし、祐希へとかけた

『…はい』
「あ、祐希っ。さっきは」
『紫那……もうかけてこないで』
  プツン……


   は?


なんだよ、今の
なんで切られたわけ?
忙しかった?
いや、違う
そんな感じじゃなかった

『もうかけてこないで』

かけてくるなって、どういうことだよ
なあ、祐希



紫那からの電話を切った
話したくない、話したくない

『結城、仕事しないってどういうことだ!』
マネージャーが家のドアを叩く
「そのままの意味です。 俺はもう働かない」
『一体なにがあったんだ!』
「…なにも、なにもないから」

なにもないから、ダメなんだ…

俺はその場に崩れ落ちた

「う、ぐっ…」
視界が揺らぐ

ダメなんだ……俺はもう…俺たちはもう

『結城頼むから開けてくれ。なにかあるなら話を聞く』
「…にもないって……なにもないっていってるだろう!!帰れ!帰れよ!!」
『結城…』
「うるさい!うるさいうるさいうるさい!!!黙れよ!!!!」

もう二度と、会えない

『…そんなに嫌なのか、海外でデビューするのが…』
「…………」

嫌じゃない、長年の夢が叶って嬉しい
だけど

−ああ!迷惑だよ!さっさと帰れ!−

さっきの紫那の言葉が頭から離れない

俺は紫那に聞きたかっただけなのに
海外へいってもいいか、だめか
それなのに……


『結城…』
「ごめんなさい………暫く一人にさせてください」
『…わかった』

俺は紫那にとってどうでもいい存在……




数日後、俺はニュースから流される言葉に耳を疑った

『いよいよ海外進出される結城 刹那さんですが』

結城が海外へ?
うそだろ?




携帯がさっきから何度も鳴ってる
この着信メロディーは、紫那の曲

俺と紫那が大好きな曲

紫那に、会いたい

会いたくない

恐い





出ない。
電話に出やがらない!

「紫那、こんな時間にどこに」
「友達ん家!」

バタンっ

ふざけんな!海外へいくだと!
そんなの、そんなの許さねえ!




電話がぱったりと途絶えた
もういいんだ、紫那は俺なんていらないから

なのに俺の中は紫那でいっぱい……

紫那、紫那、紫那……


『へぇ、クッキー好きなんだ!俺も好き!』
『祐希はなんでこの世界に入ったんだ?』
『祐希………好きだよ』



「祐希!!」
合鍵で扉を開けて真っ暗な廊下に明かりを付け、寝室への扉を開いた

案の定奥には祐希がいて…

「祐希、どうしたんだよ、電気も付けないで。ベッドに座り込んで」

俺は割れかけのガラスに触れるかのようにそっと近づいた

「…なあ、祐希。」
「………」

紫那の声がする。
大好きな−大嫌いな−紫那の声がする

紫那の匂いがする

紫那…紫那、紫那、紫那紫那紫那!


「いっ!」
気が付けば俺はベッドの上に寝かされていた

「ゆう…」
「紫那………どうして」
「っ」
「どうして来ちゃったの」

祐希の声は恐ろしく低かった
俺を押さえつける手も、いつもより強かった

「祐希、なにしてんだよ、なあ、祐希」
「…紫那、紫那なんて大嫌い。嫌い、嫌いだよ」
「祐希……」
「だからさ……忘れるね、紫那のこと」
「はっ!?」

ビリッ!!
嫌な音だ
布が切れる音
祐希が俺の服を破った音


「祐希!なにして」
「紫那も俺が嫌いなんでしょ?だからさ……犯してあげる」
「!」

引き千切った服で腕をひとまとめにし、ベッドへとくぐりつけた

「ふざけんな!祐希やめろ!」
「……嫌い、嫌いだよ紫那。俺のことを見てくれない紫那なんて…」
「祐希!」

初めて、祐希が恐く思った
エッチでは俺がいつも下で、それはかわりないのに、どうしてこんなに

「痛!痛い!ゆうきっ!」
なにもしないソコに、熱くたぎった祐希のモノが押し込まれる

「いや、あっあああっ」
「ふふ…紫那、しなぁ…」
「ああっ、あ、痛っ、やあ」
「気持ちいい?しなぁ」

おかしい…おかしいよ祐希
そんなに、嬉しそうな顔すんなよ

「あっ、ああ!あー!」
「紫那…イッちゃったね。気持ちよかった?」
「やめ、まだ動…いやあ」

俺のことなんてお構いなしに律動を繰り返す

「紫那…イイ?気持ちいい?」
「だめ、あっ痛い!」

俺の足を持ち上げて俺に挿入部分が見えるように体が半分に折り曲げられる

「深っああ!痛い!!」
先程より挿入が深くなり、痛みが増す
そしてなにより、祐希のモノの大きさが更にでかくなる

「いやああ!」
「ああ、締まるっ…気持ちいいっ」
「あ、あっ、あ」

ギシギシとベッドの音がその激しさを表す

「紫那…紫那紫那っ」
「やだ……ぁ…やめ」

もう…おかしくなる

「紫那…出ちゃう…出すよ!!」
「あああ……いやあっ…」
「紫那っ――」
「あ、あああーっ」

祐希のモノがドクンと脈打って俺の中がジワリと熱くなる

「紫那…」
「もう…やめ、て…」

もう俺には動く力が残ってなくてただ涙を流すしか出来なかった
祐希のモノがまだ入っているのを感じるよりも、ソコの痛みが和らがなくて、先程の祐希を思い出して犯された恐怖心か体が震えた


「紫那……」
「お願…もうやめて……」

どうして、こんなことに

俺はただ、お前に会いたくて


  あ


『だって!紫那に会いたかったんだもん。』


はは、俺も祐希と一緒だったのに
なんで俺はあんな言い方をしたんだろう

「紫那……ごめんね」
ズルリと抜ける感触にさえ、鳥肌が立った

「明日、家まで送るね。…ごめんね、紫那」
俺の横に倒れ込むと俺を抱くようにして祐希は眠りについた

「ゆ……き」

声が掠れてて出ない
「ご………ん」


祐希が深く眠りについたのを確認すると砕け散った腰に鞭を打ち俺は帰路を行った



End






「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -