夏祭り&花火大会




夏、蒸し暑い夏、蝉の声がすっげぇ耳障りな夏、そして…子供が一番元気になる季節…

「玲兎!起きろよ玲兎!」
「う゛ー……」
「今日レンタル屋さん連れてってくれるっつったじゃん!」

レンタル屋?あぁ…レンタルショップか……そういやそーゆー約束したような………

「無理。暑い」
「! なんだよ嘘つき!嘘つきはなあ!狼になるんだぞ!」

なんだそれ狼少年混ざってんじゃねえか 変なとこで

「おーなってやらぁ…だから寝かせろ」
「いやだー!いくんだー!」
「う、……」

揺らすな、揺らすな!!

「玲兎玲兎玲兎玲兎玲兎玲兎ォォォォ!!!!!」
「あーーーーー!うぜぇ!」



「3つまでだかんな」
「うんうん!」

目なんか煌めかせやがって……。
まあ…オレがいない間暇なのはわかるけど…

「玲兎!決まったよ!」
「早いなっ」
「えへへー」

曾良が決めた3つのDVDをレジへと持って行く

「ご利用期間はどうしますか?」
「…1週間で」
「かしこまりました。」

支払いを済むと変な紙切れを渡された

「DVD1週間借りられる方に差し上げてるんです。
今日、そこの川で花火大会があるんで、夜店無料券です」

花火大会……?あーそんなんあったっけ

「どうも」



「なんだよ!さっきの店員!」
「お前こそなんだよ、曾良」
「あの店員玲兎みて顔真っ赤にしてたぜ!」
「はぁ?」

普通だったと思うが…
そう思っていると腰に曾良が巻き付いてきた

「玲兎は俺のなんだからな!」
「あーはいはい」
「玲兎は?俺は玲兎のモノ?」
「……そーなんじゃねぇ?」
「♪♪♪」

そんなことでなんでそんなに嬉しそうな顔すんだよ
……こっちだって照れんだろ…

「そういや、花火大会ってなに?」
「でかいのを空に上げて花を咲かせるみたいに見えるのを皆でみるんだよ」
「楽しい!?」
「…楽しんじゃねぇ?」

  お前なら



「ひ、ひひひひ人がいっぱいだあああ〜」
「大丈夫かよ、曾良」
「いろんな臭いがするぅ〜」

夜、土手にいくとそこは沢山の人で埋め尽くされていた
いろいろな臭いが混じりあい、曾良はすっかり人混みに酔ったようだ

「開始からこれじゃあ最後まで持たないぞ」
「う〜…平気ぃ…」
「…はぁ……ちょっとこい」
「…う〜……」

フラフラな曾良の手を取ってズカズカと人混みを掻き分けていく

「ちょっとここにいろ」
「う…?」

川の方にある石に曾良を座らすと玲兎は人混みの中に走っていった

「…れいとぉ…」

曾良は小さく声をあげるが人達の声に消されてしまう
しゅん…と落ち込んでしまい、曾良は玲兎が帰ってくるのを待っていた

「オラ」
「!」

いきなり視界に現れたのは、フランクフルト

「え?」

顔をあげると玲兎が焼きそばやたこ焼きなど沢山の食べ物を買ってきてくれていたのだ

「食え。」
「あ、ありがとう!玲兎!」

差し出されたフランクフルトにかじりつきあっという間に食べ終わると、次は焼きそばに
玲兎は曾良の隣に座りタバコを吸い出した

「むぐぐごごっ?」
「食ってから喋れ」
「(ゴックン) 玲兎は食べないの?」
「腹空いてねー」

今日もらった紙、夜店無料券は何度でも使えるらしく、実のところ金はかかっていない

「じゃあ遠慮なく!」
「マジ遠慮ねーなお前」

焼きそばもすぐにたいらげ、たこ焼きに手を伸ばす
そんな曾良をみて、珍しく肩を揺らし笑う玲兎

そんな玲兎との一時が曾良にはとても幸せだった



「いくぞ、曾良」
「うん!」

腹も一杯になり、人混みにも慣れ曾良と玲兎はまた人混みの中に歩き出した

「玲兎〜喉乾いた〜」
「あ?」
「…あれ食べたい」
「まだ食うのかよ」

曾良が指差したのはかき氷と書かれた夜店だった

「たく、しゃあねえなあ」
「やったね!」
「つか喉乾いてんじゃねえのかよ」
「あれがいい!あれ!」

どうやらかき氷にかけられるシロップがとても美味そうに見え、曾良の食欲がまた目覚めたらしい
買ってやったイチゴ味のかき氷を嬉しそうに頬張る曾良
途端眉を寄せる

「冷たい!」
「氷だからな」
「でも美味しい!」

またタバコを吸う玲兎

「玲兎タバコ臭い」
「うっせえ。」
「この前テレビでタバコは体によくないって言ってた」
「あーそうですか」
「…玲兎ってなんでタバコ吸うの?」
「うまいから?」



花火が見えるであろう場所に座り込む二人。

「ねえ、玲兎。早く始まんないかなぁ」

玲兎の肩に頭を乗せて甘える曾良
瞼はゆっくり落ちていく

「寝るなよ」
「…寝てな……ぃ…」
「おぃ」
「………zZZ」
「……」

寝てんじゃねえか

「…まぁ花火始まったら起きるだろ……」


曾良の意識は深い闇の奥へと落ちていった



『――――』
『―――』

……誰かの話し声が聞こえる…

『―――ト……――』
『――っ…―――』

玲兎の声………?あと女の人の……


『ねえ一緒に花火見ようよレイト〜』
『楓さん。俺一緒に見る人いるんで』
『でも寝てるじゃん。ねぇ〜レイトぉ〜』

玲兎の声が…いつもより高い………ん!?

「!」
「ぐっ!!」

曾良が勢いよく体を起こすと、玲兎の顎と曾良の額がぶつかり合った
顎を押さえる玲兎

「えっ!?ごめん玲兎!って俺肩で寝てたんじゃ」
「レイト大丈夫ぅ? ちょっとアンタレイトになにしてんのよ!」
「な!なんだよおばさん!」
「おばっ…!!?」
「だい…大丈夫ですっ…」

顎を押さえたまま玲兎は言った

「楓さんっ…この子と約束してたんで、今回は…」
「ふぅ。仕方がないわね。じゃあレイト!またお店でね☆」

楓と呼ばれた女性がいなくなる

「〜っ」
「玲兎大丈夫!!?」

声にならない声をあげる玲兎
顔を覗かせる曾良
曾良の表情には不安が募っている

「〜っ…てぇ、」
「ごめんなさい…玲兎」
「…っ…いいって別に っ、うわ…舌から血出てる、〜っ」

曾良の頭をポンポンと叩く玲兎
まるで、安心しろというかのように

「血…出てるの……?」
「あ?…たいしたことねぇよ。 つかお前石頭だ…っ――」
「――――」

玲兎の唇を自分の唇で塞いだ
唇についている血液を舐めとる曾良

「…ごめんね、」
「……」

唇を離して謝る曾良に、玲兎は顔をそらした

「怒ってねえって」
「でも……」

どーん!

「!」

辺りが急に明るくなったかと思うと、大きな音が体に響いた

「き、綺麗…」

打ち上がった花火に夢中になる曾良と

(……危なかった)

一人理性と戦う玲兎だった。



END
2008.8/1







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