第四章  






「お泊り…ですか?」
「うん。修学旅行から帰ってくる丁度その日、家族が田舎に帰って誰も家にいなくてさー。どうせならお前の家泊まって土産話でもしてやろうと思ってるんだけど…迷惑ならやめるけど?」
「べつに、いいですけど」

ちょっと歯切れの悪い小柳。
本当に迷惑そうではないものの、やはり唐突だっただろうか?
恋人というのに自分はあまりに慣れていない所為か、どこまでが恋人でどこからが友達なのかわからない
恋人としての普通とは、一体なんだろう

「あ。でもきっと俺疲れてすぐに寝ちまうと思うし、やっぱお泊りしなくても」
「いえ!是非泊まりにきてください!」
「え、お、おう」
さっきまでの歯切れの悪さはどこに行ったのやら
力説されてしまった。

(3日先輩に会えないと思っていたけど、オレの家に泊まりにきてくれるということは帰ってきたばかりの先輩に会える! それに触れることも見つめることも! まぁオレのことだから見つめてたらムラムラして我慢できるかわからないけれど、それでも会えないよりましだ!1日も早く先輩に会いたい!だからオレの家に来てくれるなんて嬉しすぎてなんて言ったらいいか…!)

「こ、小柳?」
「先輩馬鹿だし帰ってくる頃には忘れてそうですね。だからメールしてあげます」
「な、可愛くねえなーお前は。」


そして俺は二泊三日の修学旅行に旅立ったのだった




何事もなく修学旅行が終わった(当たり前だが小柳が言っていたくだらない変な妄想も当然なかった。)
そして、小柳から

『晩飯どうします?とりあえず先輩が作った料理のほうが美味いし、先輩の料理が食べたいんでさっさと帰ってきてくださいね。寄り道とかしたら家に入れてあげませんから』

と、可愛くないメールが届いていた

『帰ってきて』ってところ、ちょっと可愛いけどな。
夫婦みたいで…ってなにいってんだ俺は!




「ほい、寄り道もせず帰ってきてやりましたよ旦那様が!」
小柳の家に着く次第そんなことを言ったら思いっきり変な顔をされてしまった

「誰が旦那ですか。先輩なんて家政婦以下ですよ」
「おまっ、なんだよ冷てぇなー」

さりげなく酷いことを言われたというのに、三日ぶりに小柳の顔が見れて嬉しい俺がいた。
三日なんて短かったが、やっぱお前の顔みないと帰ってきた気がしないよ

腹をすかせた小柳さんがこれ以上不機嫌にならないうちにさっさと飯を作って
「って、なんです小柳さん?」

さっきまでツンツンだったというのに、俺がキッチンに向かった途端後ろから抱き着いてきた

「…おかえり…なさい…。……なさま…///」
「え?」

今「だんなさま」っつった?
おいおい、なに顔隠してんだよ、耳真っ赤だしバレてるぞ

「…ただいま。」

やっぱこいつ可愛いわ。
ツンツンだと思えばこうやって顔真っ赤にするし、隠れて喜ぶし
お前に早く会いたくて、疲れてるのに走ってきてしまったこと、言ったらもっと真っ赤になってしまうだろうな。でもそれを言ったら恥ずかしさのあまりツンが半端なく発動すると思うから黙っておこう

ただいま、小柳。





先輩が帰ってきた。
オレのところに帰ってきてくれた。
すごく嬉しい
会いたかった。ずっと会いたかった
三日間だというのにオレはもう会えないような気持ちだった
もうだめだな、オレ。先輩にメロメロなんだ…。



「………」
飯も食って風呂も入って、さ 夜はこれからですよ
なんて思っていたのに、オレが風呂上がってきたら先輩はオレのベッドでぐっすり寝息をたてていた

本当にぐっすりだ。起きそうにもないな。相当疲れがたまってたんだ。

まさか
本当に友人に襲われてないよね?
大丈夫だよ……な?


……ちょっとチェック


別に先輩を疑ってるわけではない。そう自分に言い聞かせて先輩のTシャツの裾をめくる

程よくついた筋肉。きれいなおへそ
うん、痕とかついてないね

あ、でも修学旅行で食べ過ぎたのかちょっと腹が出てる…。
いいもの食ってきたんだろうな。あそこだと海鮮料理とか、かな。
食べ物に執着はないけれど、先輩はなんでも美味しそうに食べるから一緒に食事とるの好きなんだよね。知ってた?先輩…


あー、だめだ。先輩の体みてたらイヤらしい気分になってきた
先輩、オレね 3日間我慢したんですよ。先輩に会いたいのも、先輩に触れたいのも先輩ので突かれたいのも。
だから、ご褒美くださいね…。

先輩が起きないようにベッドから離れ部屋の電気を消したあと、先輩の上に跨りめくりあげていたTシャツの下の肌に触れる。
風呂上りの先輩のにおい、オレと同じ石鹸のにおい

先輩の乳首。舌で転がして、押して、噛んで、舐めて、吸って

「ん…っ」
先輩が声を漏らした
顔を覗き込んでみたが起きてはいないようだ

やさしく唇にキスを降らしたあと、顔中にキスをする
そして右手でゆっくり先輩のズボンを下ろす
パンツ越しに触れて、形を確認するかのように指先で触れる

「ハァ…せんぱ…」
先輩の、少し反応してる…

「舐めても…いいですか…?」
聞こえてなんかいないだろうけどオレは先輩に問いかける
そして下着から取り出すと、舌先で下から上に舐め上げる

あ…先輩の、懐かしい…味

初めてエッチしたときのこと覚えてますか?オレ、先輩に触れて嬉しくて自分の欲を抑えきれなくなっちゃって、舐めちゃったんですよね。
先輩も気持ちよさそうに喘いで…あぁ、寝ている先輩に悪戯するのも楽しいけれどやっぱり声が聞きたいな

「へんぱぁい…おひぃてよぉ…」
先輩のを口に含みながら起きてと、オレに触れてと念を込める

と、オレの頭に手のひらの感触が


え?


顔をあげると先輩がうっすらと目を開けてこっちをみていた


「せ、せんぱ…起きて…」
やばい、起こしてしまった。寝込みを襲うなんて、なんてことをしてしまったんだオレは

怒られるかな、どうしよう、どうしよ…

先輩から目を離せないでいると、先輩はゆっくりと起き上がり

そしてオレを押し倒した


「は…い?」
オレが先輩に押し倒された…?
そんな、まさか、あのヘタレな先輩が?

目の前の先輩はどこか虚ろな表情をしていて、そしてオレの耳に先輩の舌が

「ひぁ…っ!?」
せせせせんぱいがオレの耳を舐めた?!
ちょっとまって、なんだこれ!なんだこれ!

「せ、せんぱ…っ、怒ってます?」
先輩の肩を押しても離れない
それよりも先輩の舌がオレの耳の穴に

「あっ、ひっ…せ、せんっ…だ、だめですって…」
どうしよう、先輩から攻められるなんて夢にも思わなかった
「ふっ…うっ…あっ」

先輩はオレの耳を舐めたり噛んだりしながら右手でオレの胸を触ってきた
「せ、先輩っ…だめ、乳首…っ、触らないで…っ」
指先がオレの乳首を摘んだり撫でたりこねたり

オレ、先輩に攻められるの慣れてないよっ!だめだって!

「先輩、謝るからっ…許しっ…」
「悠…」
「!」

先輩、今オレの名前…呼んだ?

「あっ、だめっ、先輩だめだって…!」
ズボン越しに自身に触れられて腰が引ける
相変わらず耳は舐められっぱなしで耳の感覚が鋭くなってくる
もうオレは喘ぐことしか出来なかった

「…っ、あんっ…せ、せんぱ…ハァ…んっ」
いつの間にかズボンの中から取り出された自身が先輩の手に、扱かれてる
先輩の指が自身の先に…
だめだ、気持ちいい…

「せん…イクっ…あっ、ああっ…」
亀頭を抉られ強い刺激にオレはとうとう果ててしまった

初めてだ…先輩にイかされたの…

「ハァ…せんぱい…どうしたんです…?」
なんかいつもの先輩と違う
全然ヘタレじゃないし、攻めてくるし、それに喋ってくれない

「せんっ…」

あ、やばい、先輩からのキス…

「んぅ…っ、はっ、んぁ…」

先輩が舌絡めてくる、すごい積極的…
もしかして修学旅行でこんなことを習得した…?

まさかね、そんなわけがない

「!」
キスに酔っていると先輩の指が孔に触れていた

「ま、まって、そこはオレが…!」
そんなことしなくていいんです!いつもみたいにオレが…!

「ひっ…!」
オレが止めているのにも関わらず先輩はオレの中に指を進めた
先輩の指が中に…っ、だめだって、先輩っ…おかしいよ、先輩っ……

「うぁっ、ちょ、だめですって…っ、ほんとにやめっ…」
先輩の指が、幸か不幸か前立腺に
腰がジュクジュクに溶けるのがわかった
何度も何度も擦られて、突かれて、擦られて…
気持ちいいけど、物足りない

…はやく、挿れてほしい…

「せ、んぱい…もう、いれ…挿れて…っ」
「悠……」
「あああっ…」
熱く滾った先輩のがオレの孔に突き刺さる
3日ぶりの感覚にオレの全身が先輩を受け入れてる、そんな気がした
自分でもわかるくらい先輩を搾り取ろうとしている

先輩の背中に手を回す
(先輩の背中って…こんな…)

先輩とはいつも騎乗位とか対面座位だったから、正常位なんて、初めてで…

「あっ、奥っ…せんぱ、奥突いてぇ…」

いつもと当たるところが違って、オレは余裕なんてなくなっていた

「あひっ…せんぱい、早っ…んぅ」
先輩が腰振ってる、すごい、すごい気持ちいい…

「あっ…キス、してぇ…」
先輩の頬に掌を当てる
息を乱す先輩の苦しそうに眉を寄せた顔…強い意志を持った瞳

…やばっ、エロっ…

先輩のオスの顔に興奮し、オレは口の端をクッとあげ挑発的な表情を浮かべてみる
すると先輩も珍しくふっと笑ってオレに深く口づけてきた


攻める、先輩も…いいかもしれない…


「先輩っ、もうイくっ」
「俺も…っ」
「中、中に出してぇ…っ」
「…っく…」

足を先輩の腰に巻きつけ抜けないよう、ぎゅっと抱きしめる
そして先輩の息を耳元で感じながらオレたちはほとんど同時に果てた



「せんぱい…?」
イった後先輩は力が抜けた人形のようにオレの上に倒れこんできた

「せんぱ…」
「ぐー…ぐー…」
「………」

ね、寝てる…。え?余韻は?初先輩が攻めてきました記念は? は?



「…先輩のばか…」


そしてオレは一人鈍い腰を抑えながら後片付けをするのだった





−次の日


「なんか結構疲れてたみたいで、風呂上がってすぐ寝ちゃって悪かったなー。」
「いいですよ、それに、そのあと起きてくれたじゃないですか」
「え?なんのこと? 俺、起きてないけど?」
「え?」


「寝ぼけてた…んですか?あれで?」
「は?だからなんのことだよ?」

昨夜の攻めてきた先輩は、寝ぼけた先輩?
そんな、まさか。
だってあんな激しくて、先輩にしては珍し………

  珍しい…………


  あっ。



「……最低」
「えぇ!?なにが?!」



先輩の、馬鹿…。






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