第二章  



「月島先輩、一緒に帰ろ」

俺、月島 昇は男喰いで有名な 小柳 悠に懐かれている
先週、ほぼ初対面に近い小柳に、クラスのど真ん中で告白をされ 次の日には誰もいない放課後の廊下でエッチをしたからだ

それからというもの、毎日のように放課後になると俺のクラスにくる
おかげでクラスの連中には「小柳と付き合っている」と噂され、しまいには「小柳はエッチの最中どんなだ」と聞かれる

もちろん、小柳とは付き合っていないし
つーか男と付き合うってどうよ
まずコイツのことよく知らないし
エッチはしたけれど、なんつーか…軽く襲われた感じだし…

「先輩聞いてます?」
「へっ!!?あ、あぁ…っ」
考え事をしていたら小柳の声が聞こえ不意に変な声で返事をしてしまった。
「こないだのエッチ、どうでした?」
帰り道、小柳が不意にそんなことを言い出した
ちょうど考えてたことで、顔に出ていたのかと慌てふためく

「お、おまっ、道中でそんな…」
「誰もいませんよ、だから聞いたんです。ね?先輩、どうでした?」
生意気そうな笑みを浮かべながら小柳は可愛く小首を傾げる
男がそんなことしても可愛くねーっつーの!!

 ……可愛いけど…

「……わかってるだろ」
「わかんないよ、教えてください先輩」
「…っ……よかったよ…っ」
「なにがよかったんですか?」
「!!?」

こいつ…まじ性格悪いな
わざと言わせようとしてる

「…だから…エッチ…だよ」
「エッチの何がよかったんです?オレたくさんエッチなことしましたよね?」
「……っ…」
「先輩、真っ赤にならないで教えてくださいよ。なにがよかったんですか?」
「……ラ…」
「え?」
「…っ…フェラ…とか」
「とか?」
「!?」

こいつ、まだ言わせんのか…!

「……お前の…腰使い…だよっ…」
「先輩、オレの中は気持ちよかった?」
ゆでダコみたいに真っ赤に染まりながらも俺は頷いた

誰かに身体を触られたのも、誰かと身体を合わせたのも、全て小柳が初めてだった
好きな子以外とはしない、と長年誓っておきながらも、俺はコイツと身体を合わせた
我ながら快楽に飲まれやすいな、と本気で思った
でも小柳の持つテクニックは、俺の弱い場所弱い場所へと入り込んでくる
途中で止められたらきっと追いかけてしまうだろう
それくらい、俺は小柳が味あわせてくれる快楽に弱かった

「ね、先輩。明日学校休みでしょ?」
「え、あ…そうだな」
「オレの家に泊まりにきてくださいよ」
「は? …いや、親御さんに迷惑だろ」
「あれ?先輩知らないんですか?オレ一人暮らしですよ」
「へ?」

高1のコイツが一人暮らし…?
あ、もしかして

「親は遠くに住んでるのか?」
「いや、隣町」
「な……だったらなんで?」
「仲が良くないからですよ。 ね、先輩オレん家泊まりにきてくださいよ」
「ちょ、こらっ、勝手に引っ張るな…!」

そういって、半ば強引に俺は小柳の家に向かったのだった


「へぇー、意外と綺麗のな」
「意外ってなんですか」
よくあるワンルームの一室
玄関を入ると廊下には、キッチン、洗面所、お風呂場、トイレがあり、そこをまっすぐ進むと部屋がある
部屋の右手にあるベッドに腰を落とす

「つか泊まるとか急に決められてもさー。親に連絡しないと」
「ああ、そうでしたね。 …普通はそうだもんな」
小柳は小さくボソリと呟いた

「それじゃあ先輩、オレ今から着替えますんで、一休みしたら先輩の家行って泊まる準備をしましょう。そのときに親御さんに許可もらいましょうよ」
「んー、いいぜ」

てかよく考えると、お泊まりなんて久しぶりだなー。中学ンときはよくしたっけ

物思いに耽っていると、目の前で小柳が服を脱ぎ出した

「ちょ、おまっ…こんなとこで脱ぐなよ!」
「は?先輩なに赤くなってんですか?男同士だし、普通じゃないですか」
「えっ、あ、まあ…うん…」

それは…そうなんだけど、
なんかお前が脱ぐと恥ずかしいっつーか、
目のやり場に困るっつーか……///

「先輩」
小柳に呼ばれ、逸らしていた視線を戻すと上半身裸の小柳がベッドに腰掛ける俺に迫ってきた

「!」
「真っ赤になって…。なに? オレに欲情してるんですか?」
「ち、違っ…!」

近い近い近い!
小柳の白い肌がっ…、細い腰がっ…、ピンク色の小さな乳首がっ…、う、うわあああ!!!

「ふふ……、先輩ってまじ反応おもしろいですね」
「…う…うぅ」
「ね、先輩……。先輩ん家行く前に…、ヤりましょうか」
「っ…は!?」
小柳がニヤッと笑ったかと思うと、肩をグッと押され俺はベッドへと倒れ込んだ
馬乗りになった小柳はさぞ楽しそうにニヤニヤと笑っている

「な、なにすんだっ…!シねぇよ!」
「…まぁまぁ先輩、素直になって」
「ちょ、触んなバカッ」
小柳の指が制服のボタンを外していく


やばいって!このままじゃ、また…!




ぷるるる…ぷるるる…




いいタイミングで小柳の携帯が鳴る
小柳は溜め息をつくと、つまらなそうに俺から離れ携帯を手にした

「もしもし」

…はぁ…助かった。ほんと小柳はどこでも発情するから困る…。

起き上がり、少し乱れた着衣をしっかりと着直す

「またアンタか」
「……?」

電話をしている小柳の声が少し苛立っているような気がした

「ホントしつこい!もうアンタに興味ないんだってば!何度言ったらわかるんだよっ」

なんだ…?誰から電話なんだろう?
てか小柳もこんなキレ方するんだな

「マジしつこい、ウザい、キモい。電話してくんなっっ!!」
そういって、小柳は携帯を閉じた

「………」
苛立ちを隠せていない小柳は、なんか新鮮だ

「…今の、誰から?」
聞いちゃいけなかったかもだけど、なんか気になって聞いてしまった

「……昔の男、ですよ」
「へ、へえ…、なんて?」
「…なんか最近よく電話してくるんですよ、オレに“会いたい”とか“エッチしたい”とか、そんなことばっかり言ってきて…」

あ……そういや、小柳と付き合ったやつは小柳から離れられないって噂があったな…、あれマジだったのか…

「……ちょっと、テクニックが良くて褒めたぐらいで図に乗っちゃってさ…、もう飽きたっつーの」

“テクニックが良くて”

…俺、小柳にテクニックが良いとか言われたことないな…

言われたのは

『…先輩の…んっ……今まで…の、中で………一番、…ハァ……大き…』


……思い出すのも恥ずかしいが…、どうやら小柳が今まで身体を合わせてきた人間の中で一番アレが大きいらしいのだ

…そんなの褒められてもなんか複雑だよな
やっぱ、テクニック上手いやつの方がいいし

「…すればいいじゃん」
「は?」
「……付き合う気もない俺なんかとエッチするよりさ、小柳のこと好きでテクニックもあるそいつと付き合えばいいじゃん」
「は?なに?」
「俺はお前と付き合う気もないし、エッチもしたいと思わない。エッチがしたいならそいつとすればいいじゃん」
そうだよ、わざわざノンケの俺なんか相手にしなくても…

「妬きもち?」
「……は!?」
「先輩なに妬いてんすか」
「ややや妬いてねえよ!!?」
な、なに言ってんだこいつ!?

「大丈夫ですよ、先輩。オレにとって先輩は特別だし、先輩にとってオレも特別なんでしょ?」
「は? …いや…違…」
「先輩、いい加減認めたらどうです?オレのこと好きなんでしょ?抱きたいんでしょ? でも自分は元童貞だし、テクニックもない。男と付き合ったこともないもんだから、オレと関わるのが恐い。そうでしょ?」
「なに、訳のわかんないこといって…」

ゆっくりと小柳は俺に近づき、膝の上に座り、首に腕を回した

「知らない昔の男に嫉妬する先輩、可愛いですよ」

楽しそうに、口の端を上げたあと
なんの躊躇いもなく唇が重ねられた

「んっ…!」
簡単に抉じ開けられた口の中に、小柳の舌が入り込んでくる
やばい…流されるっ…!

「ん……っ…んぅ…!」
小柳はキスが上手い…と思う
素人の俺には強い刺激だ

何度も吸われ、噛まれ、掻き回され……
俺の口からは、自分でも認めたくないような甘い声が上がる

「んぁ…! …はぁ……はぁっ」
漸く解放されたときには、既に抵抗する力は残っていない

「……や…なぎ…」
「なに?先輩…。 そんなモノ欲しそうな顔して……」
小柳の掌が頬を撫でる
それが、たまらなく…気持ちいい

「……なぎ…俺」
「……んー?」
「…はっ………俺っ…」

お前と……、

繋がりたい……


「下手な誘い方。」
そんなことを言いながらも、小柳は嬉しそうに目を細めた
「いいよ、先輩…。オレを好きなだけ味わってください…」

理性のない俺は小柳の妖艶な身体に誘われるまま、身を委ねた――‐




「すっかり遅くなっちゃいましたね」
なぁんて、日の沈んだ街を二人で歩く
「……お前が悪いんだろ…っ」
「なんでオレの所為なんです、欲しがったのは先輩でしょ?」

……いや、まあ…確かに欲しがりましたけども…

「誘ったのはお前だ」
「釣られたのは先輩です」
「……はぁ」

そんなこんなで、また小柳としてしまった…。
どれだけ流されやすいんだ、俺は…!

「でも…」
「ん?」
「先輩が妬きもち妬いてくれて嬉しかったですよ」
「っ…」

そういった小柳の顔が可愛くて…、俺は騙されないぞっと首を左右に振った

…確かに、小柳の昔の男の話を聞いて…少し胸の辺りがモヤモヤしたが、これは別に嫉妬とかそんなもんじゃない!
……と、思う…。
俺はただ、テクニックがないから……そうだよ!俺は男としてソイツに嫉妬したんだ!小柳と繋がっていたからじゃない!男として、テクニックのあるソイツに妬いたんだ!
そーだそーだ!そうに決まってる!ぜってぇーそうだ!

「なにニヤついてんですか…?気持ち悪い。」

ああ!スッキリ!



そんなくだらない話をしている内に、家に着いた

「ただいまあー」
鍵を開け、玄関で靴を脱ぎながら家中に聞こえるように声を上げた

「遅かったのねーおかえりなさい」
出迎えてくれたのは、母だった
母は俺の後ろにいる小柳を見て、少し首を傾げた

「あら…?昇の新しいお友達?」
「ああっ、こいつは…」
「小柳 悠と言います。月島先輩にいつもお世話になってます」
小柳は母に向かい深々と頭を下げ、ニコりと微笑んだ

「あらあらまぁまぁ可愛らしい後輩くんねっ」
「…そ、…そうかな…」
俺にはかなり恐ろしい後輩ですが

「狭い家ですけど、どうぞ上がって」
「すみません、お邪魔します」
「ああ、母さん。今日俺小柳ん家泊まるから」

玄関前にある階段を上りながら俺はそう母に告げる

「そうなの?二人ともご飯は?」
「あー…考えてなかったなー……。コンビニかどっかで買うよ」
「ま!だめよっ、今日は家がカレーですから家で食べていきなさい! 小柳くんはカレー大丈夫かしら?」
「あ、はい。大好きです。…でもいいんですか?そんな…」
「いいのよっ。お母さん小柳くん気に入っちゃった♪昇が用意してる間お話しましょ♪」
「あっ…おい!母さん!」

俺が呼び止めるにも関わらず、母は小柳を連れてリビングへと入っていった

「……ったく。」
しょうがないな、と思いながらも俺は二階にある自分の部屋へと向かったのだった

用意が終わりリビングに向かうと
弟の優真(ユウマ)妹の茉梨(マリ)が小柳と遊んでいた

「あ!にーちゃんおかえり!」
「おかえりなさーい」
リビングに入ってきた俺に気付いたのか優真と茉梨が近寄ってくる
「ただいまー二人とも」
小学生3年生と2年生である二人はよく俺に懐いている
とても可愛い、自慢の弟妹だ。

「ゆーお兄ちゃんに遊んでもらってたんだ!」
「ゆぅお兄ちゃんすごくおもしろいんだよー」
「小柳に…」
小柳に遊んでもらっていた…?
…ま、まさか…変なこと教えられてたんじゃ…

「先輩、いくらオレでも子供相手にナニかしようなんて思わないんですけど」
俺の心を見透かしたように小柳が淡々と告げる

「あ、あはっあはははっ、なーにいってんだよ、小柳はぁ!あははっあはっ」
「………」
「さあ!ご飯が出来たわよー」
母のその声に俺は逃げるように、小柳の冷たい視線から逃れた

「あれ?父さんは?」
「お父さん今日は遅いのよ。だから先に食べちゃいましょ」
「いただきまあす!」
「いただきまーす!」
「ふーん。そっか。んじゃいただきます」
「…いただきます」

俺のあとに続くように小柳は小さく呟いた
そういや、小柳は家族と仲が良くないと言っていたが…。
もしかして、こういう家庭円満?的な感じなものは体験したことがないんだろうか…?
そういえば、小柳が飯食うとこ初めてみるかもしれない。いつも放課後にしか来ないし、昼休みも食堂に姿は現さない

小柳がこうして生活しているだけでも不思議に思えた。


「んじゃ行ってくるな」
「行ってらっしゃい。小柳くん、今日はご迷惑かけると思うけど昇をよろしくね」
「はい、わかりました」
「おい!俺はガキかよ」
ツッコミを入れると小柳に冷めた笑いで返された
「……〜ッ…」
「小柳くん、またよかったら遊びに来てね」
「はい!今日はごちそうさまでした。では、また」

母さんに手を振り、街頭の付いた夜道を歩く
秋に近づくこの季節。
寒くも暑くもないこの気温の中で俺たち二人は歩き続けた

「先輩…」
「ん?」
「……先輩の家って…いいですね。」
「そうか?普通だと思うが…」
珍しく俯いた小柳の表情は読み取れない

「…暖かくて……好きだな」
「……小柳」
「…………ね、先輩。少しだけ……少しだけ、手…繋いでも、いいですか?」
小柳は小さくそう呟いた

「なんだよ、いつものお前ならなにも言わずに繋ぐくせに」
「………」
「……。 ほら」
差し出した手に、小柳が顔をあげる
俺の顔と手を見返している

「…ほらっ」
中々繋ごうとしない小柳の手を無理矢理引っ張る

「……先輩…ありがとう…ございます」
「…別に。」

なんか、調子狂うな…。
いつもと違う、弱々しい小柳が少し、少しだけ…可愛く見えた…。


「先輩……好きです」
「……。……よ」
「え?」

「…俺もだよ…っ///」

恥ずかしくて顔を逸らした
出逢って間もないと言うのに コイツのことよく知らないのに
キスもエッチもしてしまっているけれど、前には無かった感情が俺の中には確かにあった

「先輩…それ…ほんと?」
「……あぁっ///」
「…オレと付き合ってくれんの…?」
「…う…うん///」

なんでかわかんない
コイツは男で俺も男なのに。
ワガママで時々Sで、いつでも発情しているようなやつなのに

なんで、好きになっちまったんだろうか…


「先輩………キス、してください」
「………」



そして俺は、小柳に軽いキスを落とした。









Return




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -