06 諦めて、期待して、また同じ。


いつの頃からだったか。
私には、身に覚えのない記憶があった。
これが前世の記憶というものだと気付いたのは、これまたいつの話だったか。

とにかく、大方の記憶を取り戻した私が、今回もまた繰り返しているらしいと気付いたのは、他所のお宅に居候することが決まった時だった。
白石さんと言うらしい。
白石さんの所には、私と同じ年の男の子がいて、その彼の名前は蔵ノ介と言うのだとか。

蔵ノ介。

忘れるはずのない、その名前。
私が幾度となく愛した人の名前。

何度、彼を失うまいと誓ったことだろう。
それを果たせたことは、一度としてなかったけれど。
多分、今回も無理だろう。
こうして諦めてしまうくらい、私達は繰り返したんだから。

それでも、今回も思わずにはいられない。
彼を失いたくないのだと。
最早誓いではなくなったそれは、希望であり呪いのようだ。
今回こそはという捨てきれない希望は、彼と私とを繋ぐ、錆びついた鎖で。
私はまた、自身を過去に縛りつけて生きていく。



「やあ、救世主くん。久しぶりだね」



例え君が覚えていなくたって、私達の始まりはあの日だから。
もう二度と、『はじめまして』なんて言わない。
もう二度と、自己紹介なんてしない。
君との約束をろくに守れない私だけど、あの日した約束だけは、命に代えても守るから。
君が思い出してくれるのも、ずっと待ってるから。
何十回、何百回と生まれ変わっても。
何千年、何万年とかかっても。


だから、信じて。

何があっても、私は君の味方です。