04 おきてください、あさですよ。


……ねむい。
ものすごく眠い。
ああ、でも、もう起きんと。
せや。
今日は、おかんがおらんから、朝ご飯も弁当も自分で用意せな。
一人暮らしの朝って、こんなんなんかな。
…………ひと、り?



「しまった!はいじ(仮)がおった!」



なんで忘れとったんや!

昨日の夜、突然やって来たはいじ(仮)。
全く掴めない彼女は、昨夜はリビングのソファで寝ると言って聞かなかった。
昨日話しただけでも彼女からは、だらしなさや生活感の無さが伺える。
これはもう、俺がやるしかないよなぁ、なんて思いながら眠りについたのに!
あんな感じだから、きっと朝も弱いに違いない。

とにかく、やる事は山ほどある。
取り敢えずは、バタバタと出来るだけ大きな音を出しながら、リビングに向かう。
この物音で、はいじ(仮)が目を覚ましてくれたら、なんて少しだけ期待をして。



「はいじ(仮)…っ……?」



ばたーんっ!なんて、朝から近所迷惑極まりない音を立てながらリビングのドアを開けば、そこにいる筈の人間がいなかった。
あ、れ?
はいじ(仮)は、何処へ行ったんや?

ゆっくりとはいじ(仮)が使っていたであろうソファに近付けば、彼女に貸した掛け布団と毛布が綺麗に畳まれていた。



「はよー、くらら。朝から元気だねぇ」
「!?え、あ……はいじ(仮)?」
「ん?どうかした?」
「いや、……もう起きとったんやな。というか、その格好…」
「エプロン?あ、朝食作ったんだけど、トーストで大丈夫?もしかして、朝はご飯派?」



いや、トーストで大丈夫です。


あーもー、訳わからん。
起こさなあかんと思っとった相手が既に起きとって?
エプロン姿での登場?
更には、朝食まで作ってくれて?
少しずつ覚醒してきた頭で、徐々に処理していけば、なんとか状況をのみ込めた。
彼女は、俺が思うよりしっかりしていたらしい。
けれど、彼女がエプロンの下に着ているその服には、どうしたって納得なんて出来なかった。

なんで、



「なんで、四天宝寺の制服…?」



彼女が着ているのは、見紛うことなく四天宝寺の女子制服だった。
なぜ、彼女がそれを着ているのだろう。
ある可能性が、まだ覚醒しきっていない頭を過ったが、それだけは否定したかった。
なんだか分からないけれど、少しばかり面倒なことになりそうな気がしたから。



「あぁ。今日から、私も四天宝寺に通うんだよ」



やっぱり。

そんな会話をしているうちに、トーストはどんどん冷めていく。

俺たちが慌てて家を出るまで、あと15分。