01 お久しぶりね、まいだーりん。


ある日、家に帰ると俺の部屋には、知らない女の子がいた。
……俺のベッドに寝転がりながら。



「やあ、救世主くん。久しぶりだね」
「………どちら様ですか?」



見たことない。
見た目はごく普通の女の子。
どこにでも居そうな女の子や。
でも、俺は彼女を知らん。
なのになんで、俺の部屋にまで上がり込んどるんやろう。
しかも、救世主ってなに。
俺、普通の中学生なんやけど。



「嫌だなぁ。私だよー」
「…………」
「え、分かんないの?ほんとに?また忘れちゃった?相変わらず薄情だなぁ」



初対面の女の子に、薄情だと言われてしまった。
意味が分からない。
とりあえず良かった。家に誰もいなくて。
こんな変わった子、家族には会わせられない。
俺の友達やと思われたら困る。

ってあれ?
この子の今の台詞、どっかで会ったことあるような言い方や。
しかも『また』って。
何処で会ったんやろ。



「まぁ、いいや。暫くお世話になりまーす」
「はぁ!?ちょ、何を勝手に…っ」



いやいやいやいや。
訳わからん。
ほんまに誰なん、この子。
他人のベッドにうつ伏せになって、バタ足する女の子って。
この子が特別可愛かったり、俺とそういう仲だったら、話は別や。
けど、目の前のこの子は特別可愛いわけでもないし、勿論そういう仲でもない。
つまり俺は今、彼女にドン引きしている。



「あ、そうそう。君、名前は?」



バタ足に飽きたのか、突然話題を変える女の子。
まずは、お前が名乗れよ。
そう思ったことは、最早言うまい。
この短時間で、彼女とまともに会話することは不可能だと悟った。



「…………蔵ノ介」
「ああ、そっか。そうだった。うん、そうだったね」



諦めて名乗れば、一人納得するように何度も頷く彼女。
まただ。
また、初めてじゃないみたいな言い方をする。
君は、誰なんや?



「あの、君は一体」
「んー。そろそろ眠くなってきたなぁ。ということで、おやすみー」
「え、いや!俺のベッド!」



最初から最後まで人の話を聞かない彼女は、厚かましくも俺のベッドで眠ろうとする。
揺すっても叩いても起きようとしない。
あー…、どうするんやこれ。
取り敢えず、イラっときたからベッドから引きずり落としておいた。