さて、今日も空は青いです。
なんで青いのかって?
それは、人間という生き物が、ある意味いい加減である事の証だと思うのです。
人間の眼なんて、とても曖昧なもの。
本当のものなんて、何も見えないのです。
まぁ、それでちょうど良かったりするのだけれど。
それでも貴方の眼には、何故だか惹かれてしまいます。
何故でしょうね。
「なんでやろー」
「…………何が」
寂しさから、独り言を吐き出せば、隣の席の財前くんが反応した。
そういえば、財前くんは知っとるんかな。
今日も空が青い理由を。
「なぁなぁ、財前くん」
「何や」
「なんで今日も空は、青いんでしょかー?」
「…………唐突やな。まぁ、ええけど」
「なぁ、知っとるん!?」
「………………晴れとるからやろ」
わぉ!
財前くんにしては、なんと斬新な答えだろうか!
凄いな、財前くん!!
そんな答えでも納得してしまいそうになる私は、よっぽど彼の事を気に入っているのだろう。
多分、好きとか、恋とか、そういう事ではないと思う。
ただ、【財前光】という人間に惹かれた。
それだけだと、思う。
でもね、財前くん。
私は、気付いてしまったんだ。
「……………財前くん。ホンマは、知っとるやろ」
「………………」
「うっわー。コイツ、面倒臭い質問して来よるわ。アホに教えても、どうせ理解出来んやろ。適当に答えとこ。とか、思ったやろ!」
「………………思ってへん」
「嘘や!絶対嘘や!!」
「………………」
黙ってしまった財前くんは、きっと知っている。
そして、私も知っている。
何故、空が青いのか、も。
何故、林檎が
赤いのか、も。
本当は私が、財前くんをどう思っているのか、も。
「………財前くん。なんで林檎が
赤いんかは、知っとるんやろ?」
「………………知っとる。けど、面倒臭い」
やっぱりだ。
彼は、とても綺麗な眼をしている。
他の人と、特別違う所がある訳ではないけれど、彼の眼を綺麗だと思う。
「にしても、暑いなぁ」
「まぁ、夏ですから」
「……………みょうじ、暑くないん?」
「暑いで。財前くんが思っとる以上に」
「…………我慢か」
「どうしたら、財前くんみたいに低体温になれるんかなぁ」
「低体温でも、暑いモンは暑いで」
なんだ。
低体温でも暑いのか。
身体の中が涼しくなれば、少しは変わるかもと思ったのに。
アイスを食べた時みたいに、さ。
「あー、太陽さんが張り切っとるわぁ」
「まぁ、夏やから、なぁ」
そう言った財前くんの左耳で光ったのは、林檎の様に真っ
赤なピアスでした。
綺麗な
赤だなぁ、なーんて。
そんな呑気な夏の日の午後。