5ばん、ほうそ



あー。
ホンマ、イライラするわ。

数日前、部室で疲れた顔をしている謙也と財前を見つけた。
謙也はともかく、財前は珍しいと思い、近寄ってみたところ、二人の顔には、傷があった。
理由を訊くと、ボソボソと喋り出す謙也。
よく聞き取れへんかったから、聞き返すと、『全部、白石が悪いんやーっ!!』と叫びだしたので、取り敢えず黙らせた。
耳元で大声出すアホが悪い。
大体、何が俺の所為なんや。
財前に訊けば、俺となまえが付き合ってへん事が発覚したらしい。

チッ。
折角、俺のなまえに変なムシが付かんようにしといたのに。
お蔭で、数日間イライラしっばなしや。
あーもー、



「爆発せえ、謙也」

「なんでやねん!?」

「イライラするから」

「訳分からんわ!!」



俺がイライラしとるのに、なんでコイツはテンション高いんや。
いつもの事やけど、それは今の俺にとって、更に苛立たせる要素でしかない。
あぁ。
早よなまえに会いたいわ。



「…………なまえ、遅いな」

「……………そんな日もあるやろ」

「……せやな」





結局、なまえよりも先に担任が現れて、なまえが遅刻なんて珍しいなと思っていると、担任が去り際に一言。
『今日はみょうじ、休みらしいで』。
こうして俺の一日は、早くも終了したのだった。



「帰る」

「は!?ちょっ、まっ、おま、まだ、一限始まってへんぞ!?」

「なまえが居らん。俺も休む」

「いやいやいや。白石、出欠取ったやん!今日は、出席になっとるやん!」

「ほな、早退」



あかんあかんあかんあかんあかんあかんあかん。
なまえが居らんなんて、あかん。
なまえが休みなんて、あかん。
なまえと離れ離れなんて、あかん。
そんなん、考えられへん。

謙也が前の席で騒いどるけど、今の俺には、そんな声も聞こえへん。
俺が聞きたいんは、謙也なんかの声やない。
なまえの声や!
更に言うなら、なまえのあんな声やそんな声や!!
あぁ、どないしょー。
なまえが家で独り苦しんどるなんて……っ!!
なまえが、熱で涙目、頬も赤くなっとったり、うなされとったり、パジャマ姿だったりするんやでっ!?
考えただけでえくすt………。
なんでやろ。
今、殺気を感じた気がする。

と・に・か・くっ!!
今すぐ行くで、なまえ!



「あ、白石」

「なんや、謙也!!邪魔すんな!」



なまえに会いに行く為、急いで帰り支度をする俺。
そんな俺に、謙也が声を掛けてきた。
俺の邪魔をするなんて、謙也のくせに10億年早いっちゅー話や!

って、アカン!!
遊んどる場合やなかった!



「財前からメールや」

「財前!?そんなん、ほっとけ!」

「なまえから伝言らしいで」

「なまえっ!?」

「白石のアドレス知らんから、財前にメールしたらしい」

「なまえが何て!?」

「……『見舞いは要らんから、ノートよろしく』って」

「…………………」



あいたい。あえない。あいにいきたい。



よっしゃ!
完璧なノート……いや、聖書にしたるっ!!



「……でも、会いたいわぁ。明日は来れるんかな、なまえ」

「………白石」

「なんや、謙也」

「明日から三連休やで」

「…………!?」