2ばん、へりうむ
「財前っ!!」
「………………何スか、部長」
ある日の放課後。
部室で音楽を聴いていたら、白石部長が騒がしくやってきた。
今、ええトコやったのに。
大分萎えたけど、相手が部長なので、一応返事はしとかなアカン。
謙也さんやったら、無視するけどな。
俺は、面倒臭いオーラを前面に出しながら、ヘッドホンを外して、部長に用件を訊ねた。
すると、無言で近寄ってくる部長。
…………………怒っとる、んか?
なんや、○ャイ○ンと○ネ夫に馬鹿にされて、腹立てながら家に帰るのび○みたいなんやけど。
「財前の所為や!!」
「…………何の事ッスか」
「惚けるんやない!なまえにいらん事、教えたやろ!!」
「なまえさん?……俺、何か教えましたっけ?」
いきなり俺を悪者にした部長は、やっぱり怒っとった。
まぁ、静かにプレッシャー掛けられるよりは、マシやけどな。
そんな部長の言い分では、なまえさんが関係しとるらしい。
俺が、なまえさんに何かを教えた?
全く覚えが無いんやけど。
………いや、寧ろ有り過ぎるくらい、か。
「なまえにいらん事、教えるんなんか、じぶんしか居れへんやろ!」
「……人聞き悪いッスわ、部長」
「ホンマの事や」
「………一番最近、教えたんは、『林檎を特別な方法で保管すると、いつの間にかさくらんぼに』ってヤツっすけど」
「そないな訳あるか!!」
まぁ、流石にこれは、なまえさんにも否定された。
一瞬、信じたけどな。
あの人、ホンマに俺より年上か。
何でもかんでも信じすぎやわ。
「で、結局、何の事ッスか」
「リーベや!水兵のリーベや!!」
「………………あー……」
何やこれ。
めっちゃ覚えとるんやけど。
リーベって、アレやん。
一昨日、なまえさんと話しとったヤツやん。
全ては、俺の『リーベって大富豪らしい』発言から始まったんやけど。
あの時は、そんな出任せをいとも簡単に信じたなまえさんが、ちょっと心配になったんやった。
が、面白いので、放置。
放っておけば、話は大きくなっていた。
ちゅーか、なんで部長に話したんや、あの人。
部長が信じる訳無いやん。
寧ろ、俺が怒られるだけや!!
「…………で、部長。何か被害、あったんスか?」
「………………、って………や……ッ!!」
「?」
「なまえが、リーベと結婚するって言い出したんやッ!!」
「………………………は?」
宣 戦 布 告 。 世 界 戦 争 。「有り得へんわ!なんで、居もせえへん奴を恋敵にせなアカンのや!!第一、どうやって戦えばええんや!?突然出てきた馬の骨に、俺のなまえを渡す訳には、いかへん!!俺は戦うで!!世界戦争や!!」
この人は、まともな方やと思っとったんやけどなぁ。
気の所為やったみたいや。
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