【7】塞翁が馬


フルフェイスのヘルメットをとった狡噛くんは、私を見るなり 驚いた顔をした。
彼もまた、雑賀先生ならば私を巻き込むまいと この家から出すと思っていたのだろう。
否、それを目的として、彼は昨夜 連絡をしてきたのだろう。
その考えは、こうして無駄なものとなったわけだが。
そんな狡噛くんは、相変わらず呆けた表情のままだ。
私の顔をまじまじと見つめた後、先生を一瞥し 再び私へ視線を戻すものだから、私は 思わず声に出して笑ってしまった。



「そんな、まるで幽霊でも見たような顔しないでちょうだい、狡噛くん」
「え、あ、いや…」
「ちゃんと足だってあるのよ?」



それでも尚、不思議そうな顔をする狡噛くんがおかしくて 笑みを零せば、雑賀先生も笑ってくれたような気がした。