【1】プロローグ


2113年2月某日。

夢を見た。
俺のよく知る、ひどく居心地の良い、懐かしい夢だった。

あのまま夢なんて覚めなければよかったのにと、柄にもなく思ってしまうのは、その光景がもう二度と手に入らないことを知っているからなのか。
薄暗い部屋の、未だ見慣れぬ天井を見つめながら思うのは、そう遠くない昔の日常だ。


彼女はもう、俺の隣にはいない。