じゃんっけんっぽんっ!! 後日談。
※↑読まなくても大丈夫。


なんで、こうなったんや。
いや、理由も原因も分かっとる。
けど、認めたくない。
全部、自分で蒔いた種やって!



「………なんで、白石とデートなんてせなアカンの」

「罰ゲームやでー。諦めやー」



せや。
コレは、罰ゲームや。
暇で暇で仕方が無かった授業中、白石とあっち向いてホイをした結果や。
白石を誘ったんは私やし、あっち向いてホイにしたのも、結果的には私で、罰ゲームで勝った方の言う事を聞くなんてベタな事を言い出したのも、私や。
結局、自業自得。



「分かっとるけど、嫌や」

「なんで?ただのデートやん」

「だって、今にもスキップし出しそうなんと一緒に歩いとったら、めっちゃ目立つやん」

「え!?」



なんやのその、なんで分かるん!?的な目は。
アホやろ。
こいつ、アホやろ。

いや、一番のアホは私か。
今となっては、もう後悔しかない。
白石が言いそうな事くらい、分かっとった筈やのに。



「で?」

「ん?」

「今日のプラン!これから、何処行くん?白石の事やから、決めてあるんやろ!?」

「あぁ!」



これからの行き先を問えば、納得したように頷く白石。

何事にも完璧を求める白石の事だ。
きっと、今日の予定だって決めてあるのだろう。
何より、誘ったのは向こうなのだから、やりたい事の一つや二つぐらいある筈だ。

しかしながら、白石の囗から出た言葉は、私の予想とは違うものだった。



「それなら特に無いで!」

「はぁ!?なんでや!」

「ホンマは、植物園とか色々考えとったんやけどなぁ」

「………決め切らんかったん?」

「まぁ、そんな所や」



へらへらとそう言ってのける白石。
毒気を抜かれてしまった私は、それ以上何も言わない事にした。

が、白石も何も言わず、ただ微笑んでいる。
これでは、先に進まない。
仕方無く、無言でカフェでも探して歩く。
白石は、そんな私について来るだけ。
まぁ、無理難題を寄越されるよりは、ずっとマシだ。



「なぁ、なまえ」

「ん?」

「なんで、そんなに怒っとるん?」

「……………は?」



この男は、何を言い出すのか。
私が怒っとるって?
ずっと黙っとったからか?
別に怒っとるから、喋らんかった訳やない。
割と店探しに集中しとったんと、こういう時に限って特に話題が無かっただけや。

まぁ、行き先の無いデートには、拍子抜けしたけど。



「別に怒ってへん。行き先なんか決まっとらんでも、どうにかなるやろ」

「ちゃう。それより、前や」

「………前?」

「今日は、俺と会った時からイライラしとる」



そう言った白石は、真剣な顔をしていた。
今までにも何度か見ているが、この顔に慣れる事はない。

白石と会う前なんて、いつもと変わらない朝だった。
特に嫌な事があった訳ではない。
いや、変わらなさ過ぎで嫌だったんだ。



「あー……まぁ、白石が言うんやったら、そうなんやろなぁ」

「理由は?」



理由。
分かっとる。
気付いとる。
けれど素直やない私には、それを口にする勇気が無い。
ホンマ、可愛くない奴や。



「…………言いたない」

「ほな、俺から言うわ」

「何、を?」



尋ねる私に対して、白石は微笑んだ。
でもそれは、何処か照れているようで、何故だか、こっちまで照れそうになった。

けれど、白石が今から言わんとしている事が、予想できない。
もしかして、私が不機嫌な理由でも当てるつもりなんやろか。



「ホンマは、なまえと行きたい所、めっさあったんや」

「…………せやから、あり過ぎて決まらんかったんやろ?」

「2つまでは、絞ったんや」

「……ほな、なんで?」

「結局俺は、なまえが一緒やったら、何処でもええんや。せやから、なまえが行きたい所がええと思って」



嗚呼。
白石は、凄い。
私には出来ない事を、いとも簡単にやってのける。
私には、白石みたいに真っ直ぐ伝えられないというのに。

でも、今日に限って白石は、それを許さないつもりらしい。
今度はお前の番だと言わんばかりに見つめてくる。
そんな視線に、居た堪れなくなりながらも、意を決して小さいながらも音を出す。
自分でも驚く程、小さな声だった。



「…………が、………さ………か、ら」

「え?」

「し、白石がっ!ぎゃ、逆ナンされとっ、たか、らっ!!」



きっと、そう。
自分でもはっきりとは分からないけれど、多分そう。

私が待ち合わせ場所に着いた時、白石はキレイなお姉さん達に囲まれていた。
勿論、白石にそんなつもりが無い事も、寧ろそういうのを苦手としている事も、分かっている。
けれど、それを見た瞬間、どうしようもなく嫌だと思った。
いつもと変わらない外野も、いつもと変わらない白石も。



「………もしかして、妬いとったん?」



白石にそう言われた瞬間、何もかもが恥ずかしくなった。
白石に本当の事を話した事も、嫉妬した事も、今この場所に居る事すら。

白石の顔を見る事なんて出来ない私は、足元を見つめ続けた。



「はぁー。良かったぁ」

「…………え?」

「罰ゲームにデートなんて言うたから、嫌われたんかと思ったわ」



ごめんな、嫌な思いさせて。

白石は、安堵の息を零しながら、私の頭に手を置いた。
その時、一瞬だけ見えた白石の顔は、ごめんなんて謝る割には、にやけていて、少しイラッとした。
白石が考えてる事なんて、大体は分かってしまうもので、緩んだ顔の理由も分かるけど、気恥ずかしさからほんの少しムカついた。
そして、妬く程白石が好きだと自覚させられた事に対しての悔しさ。
あとは、



「…………なんや、白石に負けた気分や」

「何、言っとるん。あっち向いてホイで、負けたやん」

「…………アカン。屈辱が2倍、いや6.25倍や」

「どういう事!?」



でもまぁ、それでもええか、なんて思ったのは、私の中での話で。
やっぱり白石が好きやなー、なんて思ったのも、私の中での話だったりする。
けれど、言ってやらなくても、きっと白石にはバレてしまう。
だからこれは、最後の悪足掻き。
逃げられるなんて思ってないけれど、それでも悪足掻き。

やっぱりなまえの事、好きやなー、なんて言う白石を横目に、一歩踏み出す私。



「さて、改めまして」

「ん?」

「今日は何処に行きたいん?」



再び尋ねれば、白石は少し考える素振りをして口を開く。



「なまえが一緒やったら、何処にでも行くで!」



いつかの話

(どんな恥ずかしい台詞だって、君に伝える言葉なら)