宇宙を巡り旅をしてきたギャラクシーノーツ号がゆったりと元の場所、地球のお台場サッカーガーデンへと着陸した。しばらくしてすっとドアが開き天馬、神童剣城と続きアースイレブンの全員が地球の地を一歩踏みしめる。それを雷門サッカー部の部員たちがおかえりなさいと声を上げ出迎えていた。
「やっと帰ってきたんですね神童さん……」
「ああ」
「ほんとお疲れさま、剣城」
「お前もな」
天馬のそんな声には様々な込み上げる感情たちが乗せられている。久々に見る雷門サッカー部のメンバーたち。円堂監督だって鬼道さんだって豪炎寺さんだって音無先生だっている。みんなみんな、地球に帰ってきて一番に会いたい人達だった。
「アースイレブンのみんな、お疲れさま」
代表として言わせてもらうよ、とキャプテンマークを肩につけた霧野が一歩前へ出てアースイレブンと向かい合う。その両手は後ろに回され何かを持っているようだった。
「霧野……」
「おかえり、神童。みんなも本当にお疲れさま」
「霧野先輩!」
「……やっと帰ってきてくれたなキャプテン。雷門に残された俺たちは何もできなかったけど、信じていたよ」
その言葉と共に後ろの手に握っていたものを霧野が前へと差し出す。
「これが俺たち、地球のみんなの気持ちだ」
「……え、」
にこりと口元から白い歯が零れる霧野の腕に抱かれていたのは、紛れもなく真っ赤なバラの花束だった。百本とまではいかないけれどとても目に鮮やかな赤だった。
「花束と言ったらこれだろ?」
爽やかな笑顔を浮かべる霧野の後ろで、倉間の何であいつに花束選び任せたんだよ、という小さな呟きに狩屋がこれは俺の責任だからって言ってましたけど、などとささやき合う声がきこえる。
花束を受け取ろうとにこやかに手を伸ばしていた天馬も、あまりの鮮やかさに身体を固めていた。
「これ……」
そんな中、一歩前にふらりと進み天馬の横に並ぶ影。
「バラだなんて素敵ですね!」
「天馬じゃなく剣城が受け取るのか?」
霧野の腕の中の花束にきらきらと目を輝かせた剣城がいつの間にか天馬の隣に並び、同じように花束を受け取らんとして手を伸ばしていた。
「……まあいいか。剣城、みんな、おかえりなさい」
「はい……霧野先輩」
大きな花束が霧野の手から剣城の手へと渡される。渡された花束に顔を近付け、うっとりといい匂いですねと言う剣城にそうだろと再び笑みを浮かべる霧野。展開から取り残された人々はそんな二人を見ているだけだった。
「兄さんの所にも少し持っていってあげたいな……」
「花は癒やしになるからな! いいかもしれないな」
長旅で疲れ練習で疲れた人達の中、楽しそうな二人の声につっこむ元気のある者は誰一人もいなかった。
04.11