※宗京要素はすごーく薄いです……。
ナチュラルに天→京注意!
サブタイトル『こんなキャプテンはいやだ』
全体練習の少し前。早くもグラウンドに入り練習を始める姿が二つとそれを離れた所から覗き見る影が二つ。
「はあ……剣城と二人だけの練習だなんていいなあ」
思わずそう口から零す天馬の隣で、神童ははあと天馬のとはまた違う意味のため息をついた。
「俺はお前と話し合おうと思って出てきたんだが……」
「だからさっきそれは話したじゃないですか、今日は個人練習多めでって」
「いやそれはいいんだが……こんなことまで付き合うとは言ってないぞ」
「だって! ようやく剣城とそういう関係になれそうだったのにそんな邪魔が入るだなんて」
「また始まった……」
その二人の視線の先には、ゴールに向かいボールを蹴り続ける剣城と、その一つ一つが強力で速いシュートをゴール前で待ち受ける井吹の姿があった。全てがキャッチできるわけではなくたいていのボールは井吹の横をすり抜けて入ってしまう。それに唇を噛み締める井吹。しかし一つでもボールをキャッチできると嬉しそうにそれを掲げ剣城に笑いかける。剣城も剣城で柔らかな表情でそれを眺めている。
「たしかに井吹は剣城との練習で確実にいい動きになってるけど……羨ましい」
「……もう練習始まる時間だけど」
肩を落とす天馬と呆れ顔の神童。
「キャプテン何やってるんですかー?」
「もう集まってたのか」
「野崎と瞬木……」
「もう少し集まったら練習始めるから天馬のことは放っておいてくれ」
関わったら馬鹿になるからな、と神童はまたはあと深いため息をついた。
「これは結構な重傷だと思うな」
「報われる確率は決して高くありませんね」
野崎と瞬木に少し遅れひょこっとグラウンドに顔を出す皆帆と真名部。
「なっ……そんなこと言わないで応援してよ!」
練習始めるよ、とグラウンドに入り剣城たちに声をかける。
「剣城! 練習始めよう」
「ああ、そうだな」
「あと……今日の個人練習俺と一緒に練習しない?」
「あー……ごめん。個人練習の時も井吹に付き合う予定だから」
そう言って離れて行く剣城。
「キャプテン、頑張れ!」
「鉄角……その優しさは残酷だよ」
叩かれた肩をさらに落としながら天馬は小さくそう呟いた。
「キャプテンならもっと違うことに熱意を注ぐべきだと思うな……」
ぽつりと口から零れた神童の正論は誰の耳にも届かなかった。
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